生涯にわたる顎顔面の成長とインプラント治療
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シンポジウム1ものと遠心側に起こるものがあるが、近心側に生じるケースが圧倒的に多い。筆者が経験した代表的な3症例を提示し、その経過と修復方法について解説する。症例1:₇₆₅連結インプラントと₄天然歯間のコンタクト離開(図3) 患者は初診時66歳の女性で、2007年に₇₆₅欠損部に3本のインプラントを埋入し、2008年12月に最終上部構造を装着した(図3-a)。当時はハイブリッドセラミッククラウンをセメントで仮着していた。同様に₄も歯冠修復を行っている。術後は3~6ヵ月に一度、不定期にメインテナンスを受けていたが、術後1年半経過時に₅と₄の間にわずかであるがコンタクト離開を発症した(図3-b、c)。患者にはその場で伝え₄の再修復を提案したが、自覚症状がなく、相談の結果経過観察となった。その後、術後6年経過時にはコンタクトの離開量が大きくなり(図3-d)、11年後には1mmを超えるスペースが存在した(図3-e)。そして術後11年目に入った今年に、患者からの申し出で、₄をセラミッククラウンにて新製した(図3-f)。図3-a 2008年12月に最終上部構造を装着した。この時点ではコンタクトを30μmの咬合紙がわずかに抵抗をもって抜ける程度に調整していた。図3-b 術後1年半の咬合面観。コンタクトはフロスがわずかな抵抗をもって挿入できる程度の離開量であった。図3-c 術後1年半の側方面観。目視では明らかではないが、フロスがわずかな抵抗をもって挿入できる。図3-d 術後6年ではさらにコンタクトの離開が進行している。この時点では患者からの食片圧入の訴えがあった。図3-e 術後11年の側方面観。目視でも明らかなコンタクト離開を認める。食片圧入はあるものの、自身で清掃可能である。図3-f 患者と相談のうえ₄の補綴装置を新製することになり、コンタクトを適正に調整したセラミッククラウンを装着した。図3-g~i 治療終了時(g)、術後4年(h)、術後11年(i)のデンタルX線写真。インプラントや天然歯の歯周組織は問題ないが、術後11年時には1mm以上のコンタクト離開を認めた。症例1:₇₆₅連結インプラントと₄天然歯間のコンタクト離開(66歳、女性)ihg20

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