生涯にわたる顎顔面の成長とインプラント治療
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特別招聘 Daftary氏は膨大な資料・文献を提示し長時間にわたりご講演くださったが、誌面・字数の都合上、筆者の選択要約による報告とさせていただく。顎顔面の継続的成長変化のインプラントへの影響 インプラントのオープンコンタクト、インフラオクルージョン、 切縁のディスクレパンシー(図1~3)の原因について多くの論文解析から得た予測変数とリスク要素、その対策について述べる。上記の原因は身体のいわゆる成長終了後も継続される頭蓋顔面の成長によるものである。動くのはインプラントではなく天然歯を含む顎骨顔面骨格である。頭蓋顔面の成長要因には骨、顔面、歯の変化という3種類がある。 骨の変化 上下顎の骨は成人期を通じて前下方へまた頭蓋底から離れる方向へ成長し、その成長量には1~5mmの幅で個体差がある。Enlowらは、骨の成長にはリモデリングとDisplacement growthの2種類あるとしている1)。 リモデリングでは、片側で骨の吸収、反対側で骨の添加が起こる。一方、Displacement growthは、顎骨/周囲組織全体が位置移動をともなって成長し動くように見える(図4、5)。上顎では、上顎結節、上顎洞底、鼻腔底などのリモデリングにより、同部の上顎骨が前下方へ移動する。下顎では、下顎枝、顎関節部周囲、関節腔内、下顎頭のリモデリングにより下顎骨が前下方へ移動する(表1)。 顔面の変化 女性は加齢により前頭蓋底平面に対する下顎下縁平面角の変化が発生し、上顎歯が下方へ伸び、顔が長くなり前歯部のインプラントはインフラオクルージョンになる可能性がある。また、男性は後方部で成長が起こるため、図1 インフラオクルージョン、切縁のディスクレパンシーの一例(インプラント埋入時17歳、現在20歳)。図2 頬舌的ディスクレパンシーの一例。図3 オープンコンタクト、インフラオクルージョン、頬舌的移動の一例。17歳シンポジウム1・2レポート顎顔面の継続的成長変化がインプラントに影響を及ぼす松下容子1987年 鹿児島大学歯学部卒業/同大学歯科補綴学(1)講座入局2004年 福岡市内開業医勤務2010年 OJ理事2012年 USC(南カリフォルニア大学歯学部) Japanプログラム専属通訳    日本臨床歯科補綴学会、日本臨床歯周病学会、日本顎咬合学会、スポーツ歯科学会、    Women Dentists Club(WDC)、JUC(Japan United Colleagues)略歴Yoko Matsushita福岡県勤務歯科英語通訳翻訳オフィス12

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