攻めのクラウン・ブリッジ
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201Contents Express─筆者らの研究から2)マージン付近における異物反応 支台歯形成時に付着(接合)上皮付近に認められる異物としては金属が予想されるが153,233,薄層切片では軟組織との硬さに違いがあることで,切片作製時に金属が失われてしまう可能性が高い.そこで,通常より厚めの切片を作製し,EPMAにて分析したところ,支台歯に用いた金属と同様の銀(以下,Agと略)が析出された.また,同じ部位のCaの観察,さらには単球,マクロファージの遊走134,135をみるため,MCP-1による免疫染色を行ったところ興味ある知見が得られた. ここで析出されたAgが存在する場所には,Caおよび単球,そして貪食能を有するマクロファージが存在することがわかった.つまり炎症部位にCaが存在することが示された.炎症部位にCaが存在することはすでに報告されており,興味深い結果となった.そこで,炎症兆候をはかる指標として,Interleukin-6(以下,IL-6と略)を用いての免疫染色も同じ部位に対して行った.しかし,炎症がその時点で起こっていたかどうかという傾向を示すIL-6の免疫染色は陰性であった.仮説を展開すると,「支台歯形成により異物が侵入し,その時点では急性炎症が起こり慢性炎症となったが,経時的に異物被包化の方向に上皮下部で反応が起こっているのではないか」ということである.臨床的には辺縁歯肉にあるメタルタトゥが発赤をともなわずにある状況ではないかと考えられる.いずれにせよ,物質を切削することで大気中では粉塵となるものが,歯肉縁下支台歯形成時に微小な異物となり,歯肉固有層中に迷入することが炎症の引き金になるということである(図3~6).図3a~c 支台歯形成されたカニクイザルの上顎左側第一小臼歯の切片(下方向,歯肉頂縁).a,bはEPMAによりCa(全体の濃い青色)およびAg(赤色)を,cはMCP-1による免疫染色を示す.bの中央部の赤色はAgを表わしているが,これに呼応するようにaのCa,cのMCP-1の反応を認める.図4 図3cのMCP-1免疫染色を拡大すると,Agに呼応する部位に明らかな茶褐色の陽性所見を認める.abcMCP-1CaAg

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