攻めのクラウン・ブリッジ
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124Ingenuity of the Crown & Bridge Restoration図9 約100症例を計測し,直径約48~50mmの範囲の円弧を描くことが判明した.図6 上顎中切歯は直径48~50mmのカーブを描いている(Nameta circleと命名したい).図7,8 中切歯断面が直径48mmであることがわかる. 模型上で上顎中切歯付近を矢状断で切断すると,直径約48~50mmの円弧を観察することができる.つまり,審美上もっとも重要な中切歯の切縁は,根のある歯槽骨から一定の円弧上に存在することになる.筆者の観察では,極端な不正咬合をともなわない限り,性別,年齢を問わず,ほとんどの人がこの範疇にあることがわかった.また,上顎側切歯においては,直径約44mmの円弧に当てはまることも観察された.この発見は審美上もっとも重要な上顎中切歯の位置を決める際にきわめて有用な情報になると考えている. たとえば,既存の修復物に審美上の問題があり,再補綴を行う場合などは,Nameta circleを利用することで本来の患者の上顎前歯切縁の位置を推測することができるため,非常に有用な情報を得ることができる.また技工作業上基準点を求めることができるため,作業の効率化および前述のとおり審美性が確保しやすくなる.2)Nameta circleを求めるための準備①‌臨床において,また模型上でも円弧の描かれたツールがあると有効である.筆者は製図用のメジャー,あるいは段ボールで自家製のメジャーを作製して円弧を求めることを推奨している.②‌技工操作においてはシリコーン印象された模型から2つの模型をつくり,1つ目を作業模型とし,2度注ぎされた模型で唇側-口蓋側断のクロスセクション模型をつくり,ワックスアップの確認をすることができる.③‌実際の作業としては,作業模型上で直径約48~50mmのメジャーを付着(接着)歯肉相当部に当てがい,切縁の位置と方向を決定することになる.3)Nameta circleを診断の一助とする 直径約48~50mmのメジャーを模型あるいは実際の口腔内で歯根付近に当てがうことにより,補綴装置と実際の萌出方向との関係を診断することができ,標準の直径約48~50mmの方向で補綴すべきか否かを判断する.以下のようにType1~3に分類し,歯冠を配置する基準にするとわかりやすい.①Type1 本来の歯軸方向に補綴装置を製作する場合は,頬側面の円弧が直径約48~50mmとなるようにする(図10~12,症例65).78

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