臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本
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8歯科医院の診断力・対応力UP! 臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本説明しやすい.そこで,Part1では,形,色,性状にこだわって口腔粘膜疾患を分類し,解説する.「鑑別診断のポイント」についても解説するので,日常臨床での口腔粘膜疾患の診断力アップに活用してもらいたい.患には,口腔カンジダ症やGVHD(移植片対宿主病)が存在する.どちらの疾患のほうが重症であるかなどということが問題なのではなく,口腔粘膜には全身疾患のいち症状や口腔粘膜固有の疾患など多種多彩な疾患が発症することを理解する必要がある. このことは,診断や治療に大きく関連する.口腔の専門家であるわれわれは,ともすれば「木を見て森を見ず」のように口の中だけに目がいってしまうことが多い.しかし,口腔粘膜に症状が発生するものの,原因は他の内臓疾患が原因であることは少なくないのである. 口腔粘膜に発症する疾病や異常は,一般的に「口腔粘膜疾患」と呼ばれることが多い.口腔粘膜疾患は,発生部位や性状,また学問的には発生由来や組織型により分類されていることが多いが,一般臨床歯科医や歯科衛生士にとっては形態(見た目)や色調により分類したほうがわかりやすく,また患者にも 口腔粘膜疾患は口腔のみに出現する疾患や異常がある一方,全身性疾患のいち症状として口腔粘膜に疾患や異常を現すものがある.全身疾患のいち症状として現れる口腔粘膜疾患には,ヘルペスや手足口病,麻疹などのウイルス感染症による口内炎や粘膜疹,天疱瘡や類天疱瘡などの自己免疫性水疱症,皮膚疾患との関連が指摘されている扁平苔癬,ベーチェット病やクローン病によるアフタなどが該当する.口腔のみに症状が現れる疾患としては,白板症や慢性再発性アフタ,褥瘡性潰瘍などがある. また,全身疾患のいち症状ではないが,宿主の免疫機能に低下や異常をきたすことにより発症する疾 口腔粘膜疾患には特定の場所に発生するものが少なくないので,病変の発生する場所をよく把握しておき,確認することが大切である.また,自覚症状として疼痛があるか,他覚所見として色や形態がどのようなものであるか,患者の訴えをよく聞き,口腔内をよく観察する必要がある.はじめに1口腔粘膜は全身の縮図2どこを見て,何を聞くか 患者は,自分の口腔内を日ごろから見ているようで,実はあまり見ていない場合が多い.そのため,突然,口腔内に見知らぬものが観察されると,悪性疾患を疑い,慌てて歯科を受診してくる.いくつかの疾患や偽疾患では,特有な訴えや徴候を示すことが多いので,注意深く患者の訴えを聞くようにする.

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