新版 開業医のための接触嚥下機能改善と装置の作り方 超入門
5/6

uestionnswer 摂食嚥下障害に対して補綴的にアプローチするために、さまざまな口腔内装置が考案され用いられています。いずれの装置を用いる場合でも、摂食嚥下障害の原因疾患・原因部位を把握し、どの部位にアプローチする必要があるのかを考慮して使い分ける必要があります。口腔内装置は、形態を回復することにより機能の回復を図るものと、機能を代償的に回復・賦活化を図るものとに分けられます(表2)。一般に組織の実質欠損に対しては形態を回復する装置が、軟組織の可動性の低下による障害に対しては機能を代償する装置が用いられます。そのなかから、義歯や歯冠修復などの一般の補綴装置とは異なる代表的なものについて概説します。1)舌接触補助床(PAP:Palatal Augmentation Prosthesis) PAPとは、上顎に適用される床タイプの補助装置で、舌の運動障害あるいはボリュームの不足による構音および咀嚼・嚥下障害に対して、義歯床の口蓋部を肥厚させた形態を付与することによって舌の口蓋への接触を容易にし、口腔機能改善を図ることを目的としています。欠損歯の有無により、有床義歯型のPAP(図7)、口蓋床型のPAP(図8)に分けられます。2)軟口蓋挙上型鼻咽腔部補綴装置(PLP:Palatal Lift Prosthesis) 神経麻痺や手術にともなう軟口蓋部の挙上不全により、鼻咽腔閉鎖不全をきたした患者さんに対し適用される補助装置です(図9)。軟口蓋部を器質的に挙上するだけでなく、同部の感覚・運動を賦活化する目的でも用いられます。3)バルブ型鼻咽腔部補綴装置(Speech Bulb Pros-thesis) 手術や先天欠損にともなう軟口蓋部の実質欠損により、鼻咽腔閉鎖不全をきたした患者さんに対し適用される補助装置です(図10)。レジン製の人工物(バルブ)を鼻咽腔部に挿入することにより機能時の鼻咽腔の開存部を補填します。表2 摂食嚥下リハビリテーションで用いられる口腔内装置部位形態を回復する装置機能を代償する装置歯冠・インプラント—歯列義歯咬合滑面板顎骨顎義歯—舌—舌接触補助床軟口蓋バルブ型鼻咽腔部補綴装置軟口蓋挙上型鼻咽腔部補綴装置顔面エピテーゼ—第4章摂食嚥下障害と口腔内装置6028摂食嚥下リハビリテーションで役立つ口腔内装置にはどんなものがありますか?<摂食嚥下障害と口腔内装置>

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る