PRD YEARBOOK2019
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II 歯肉退縮の新分類:Cairoの分類とは/尾野 誠、宮本泰和別冊the Quintessence PRD YEARBOOK 2019別冊the Quintessence PRD YEARBOOK 2019在でも多くの研究や臨床で利用されている(図3)5。しかし一方で、1990年代に入るとMillerの分類の欠点も指摘されるようになった。Smith、MahajanはMillerの分類のあいまいさを回避するために、より厳密な改変案を報告し、Pini Pratoは次に示すようなMillerの分類の限界と欠点について述べている6-8。Millerの分類の限界と欠点 現在も世界中で広く用いられているMillerの分類であるが、いくつかの欠点や限界点が報告されている6-8。 Millerが発表した原文では、歯肉退縮の深さに関してMGJを越えないものはClassⅠのみであり、ClassⅡ、Ⅲ、 ⅣはすべてMGJに達する退縮であると説明されている。したがって、歯間部の軟組織の喪失を認めるClassⅢ において、退縮がMGJに達していないもの(図4)は、分類上ClassⅢかClass Ⅰか判断できない。厳密にはどちらにも該当しないことになる6-8。しかし、退縮がMGJを越えているか否かよりも隣接面のアタッチメントレベルのほうが根面被覆率に影響を与えることを多くの臨床家が経験的に感じているため、歯間部軟組織の喪失を優先してClassⅢと診断されることが多いと思われる。実際に過去の論文では、このような症例がClassⅢはじめに 歯肉退縮の治療において、その重症度や治療の難易度を事前に把握し結果を予測することは重要である。たとえ治療結果が部分的な被覆であっても、その結果が事前に予測されたものであれば、それは根面被覆の失敗ではなく予知性のある治療である。本項では、約50年前から用いられている歯肉退縮の分類の変遷を辿るとともに、2018年、欧米の歯周病学会の合同ワークショップ1で採択された歯肉退縮の新分類について症例を交えて解説したい。歯肉退縮の分類の変遷 まず、これまで用いられてきた代表的な分類を整理したい。歯肉退縮は、1968年にSullivanとAtkinsらにより退縮部の幅(narrow or wide)と深さ(shallow or deep)で4つに分類された。遊離歯肉移植術(以下FGG)による根面被覆術では、狭くて浅い退縮でより良い結果が得られると報告されている2, 3。1973年には、Mlinekらがその基準を3mmとした4。1985年、Millerは歯肉退縮が歯肉歯槽粘膜境(以下MGJ)を越えるか否かと、歯間部の軟組織や骨の喪失の有無を考慮して4つに分類した。これは歯間部組織の喪失が根面被覆の予後に大きく影響することを示唆する最初の分類法であり、この考えは後の分類にも影響を与えた。Millerの分類は現図1 歯肉退縮の分類1968SullivanとAtkins(幅と深さ)21973Mlinek(3mm基準)41985Millerの分類(隣接面の組織量を加味)51997Smithの分類(幅と深さを細かく分類)62010Mahajanによる改変案(ClassIII、IVを厳密に)72011Cairoの分類(唇側と隣接面のCAL比較)13図2 Sullivan & Atkinsによる分類(1968)2Narrow WideShallowDeepshallow-narrowshallow-widedeep-narrowdeep-wide151

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