PRD YEARBOOK2019
6/8

Ⅰ 歯周病の分類/岩野義弘別冊the Quintessence PRD YEARBOOK 2019 歯周病の分類の歴史は古く、100年以上前よりさまざまな報告がなされてきた1。古くはC. G. Davis2(1879)、G. V. Black3(1886)などにより臨床的特徴に基づく分類がなされてきたが、1942年、B. Orbanら4により、古典的病因論に基づく分類が報告され、さまざまな分類がそこで初めて統一された。その後1965年、H. Löe5により歯周病の原因がプラーク中の細菌であることが明らかとされてからは、1966年、1977年、1989年、1999年と約10年間隔で、米国歯周病学会(以下AAP)を中心に世界的に統一された分類がなされるようになった6-8。現在本邦含め世界で広く応用されている分類は、1999年に作成されたものである9。そして2017年、世界中のペリオドンティストの代表がシカゴに集結して開催されたAAPおよびヨーロッパ歯周病学会(EFP)共催のワークショップにて、約20年ぶりにその改訂が議論されるとともに、2018年、コンセンサスレポートとしてJournal of Periodontology およびJournal of Clinical Periodontologyにて報告された10。 これまで、AAPでの改訂を踏襲して日本歯周病学会での診断基準も改訂されてきたことから、今後本邦でも新分類に基づく診断が浸透していくであろうことを鑑み、本稿では同分類に基づく臨床的診断につき、症例を基に解説する。 新分類の1999年の分類との大きな違いと特徴を挙げると下記のようになる。①病名の統合(図1) われわれは、若くてプラークコントロールがそれほど悪くないにもかかわらず、急速な歯周組織破壊のみられる症例に遭遇することがある。このような慢性歯周炎とは異なる疾患――侵襲性歯周炎が存在するとの臨床実感を持つが、実際のところ原因菌も含めた定義は明確ではなかった。そこで本ワークショップでは、侵襲性歯周炎に関連した193論文が精査され、細菌、バイオマーカー、疫学、遺伝子などについて検討が行われた。その結果、現時点では、2つの疾患を区別するだけの明確なエビデンスが不足しているため、それらを異なる疾患と区別することは妥当でないと判断された。②進行度を測るStage分類、重篤度を測るGrade分類の導入(表1、2)11。③歯間部のクリニカルアタッチメントロス(以下CAL)およびX線学的骨吸収(以下RBL)、歯周炎に伴う喪失歯の数がStage分類の主な基準となる。④RBLもしくはCALの経年的増加度合いがGrade分類にもっとも関わる。⑤初診時など経年変化が不明な場合には、RBLを年齢で割った値(骨吸収率(%)/年齢)を指標としてGrade分類を行う。⑥喫煙および糖尿病という明確なリスクファクターを考慮のうえ重篤度を評価する。以上、歯周病の診断に関わる分類以外には⑦生物学的幅径 Biologic width → Supracrestal tissue attachmentへの名称変更⑧歯肉退縮分類Millerの分類 → Cairoの分類提唱 歯周病原細菌に起因する歯周疾患:歯肉炎および歯周炎に対する歯周治療の流れ12を、表3に示す。歯周炎慢性歯周炎侵襲性歯周炎<1999年分類><新分類>図1 病名の統合。135

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る