決定版 実践マニュアル歯科用CTの見かた・読みかた
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3歯科臨床において遭遇する代表的疾患の歯科用CBCT画像とCT画像Ⅰ顎骨骨髄炎 顎骨骨髄炎の原因は,歯性感染の続発によるものが大部分です.CT画像上の特徴は原因となる炎症に近接して広がる骨の粗造化(骨吸収による骨梁構造の喪失)およびhigh density change(骨硬化)です.骨膜反応や皮質骨の消失も観察されます. 骨消失領域は軟組織様構造物(soft tissue density structure)に変化しています.骨の硬化性変化が認められる症例では,周囲の栄養管が明瞭化します.したがって,下顎管が明瞭化している場合,同部周囲の慢性硬化性骨髄炎を疑う必要があります(図3-1a〜d). 骨髄炎が悪化すると塊状のhigh density structure(高吸収域=画像上で白く表示される部分)とそれを取り囲むlow density area(低吸収域=画像上で黒く表示される部分)として腐骨の存在を認めることがあります.比較的若年者に生じた症例では,Garre’s骨髄炎と呼ばれ,骨膜反応がタマネギの皮様に見えることがあります(図3-2a〜f). また骨吸収抑制剤(代表的にはビスフォスフォネート[BP]製剤やデノスマブなど)や血管新生阻害剤(がん治療に応用)が投与されている患者に歯科処置を施した場合,重篤な骨髄炎が生じることがあります.薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteo-necrosis of the jaw:MRONJ)と呼ばれるものです. 主に抜歯などの小手術後に発症します.重篤な歯周炎の存在によっても発症することが報告されています1. CT画像上,顕著な骨の粗造化,骨消失,腐骨形成,骨膜反応,骨硬化,また皮質骨と海綿骨との間が分離した骨消失像が認められます.骨消失領域や近接した骨外には腫瘤様にsoft tissue density structureが認められます(図3-3a〜c). このような症例における軟組織の存在は歯科用CBCTでは評価することができません.軟組織を評価できる検査法(Multi-Detector row[MD]CT,MR)を選択するべきです.図3-1a〜d 下顎右側智歯の歯冠周囲炎とそれに続発した慢性硬化性骨髄炎の所見.a:下顎骨骨髄炎のパノラマエックス線画像.下顎右側智歯周囲に透過像とその周囲にびまん性に広がる不透過性亢進を認める(円).b:CT画像.下顎骨レベルのaxial像.c:下顎右側大臼歯レベルのpanorama像.下顎右側智歯周囲にlow density areaを認め(黄矢印),その周囲にはhigh density changeを認める(赤矢印).d:bと同レベルのCT画像の軟組織モード.骨消失を示すlow density areaは軟組織に置換されていることがわかる(青矢印).■歯冠周囲炎と慢性硬化性骨髄炎abcd42

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