写真とエビデンスで歯種別に学ぶ!歯内療法に生かす根管解剖
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3 根管形態の複雑さは歯科医師を悩ませる.網目状の根管形態写真を見ると「複雑すぎてお手上げです」と白旗を掲げるのが常である.少ない代表例で,すべての根管が複雑であるかのような錯覚に陥る.プレゼンテーションでは,単純な形態の根管よりも網状根管を見せたほうがインパクトは強く,印象に残る.しかし,実際は単純な根管形態がほとんどで,複雑な根管形態は稀とはいわないが,むしろめずらしい. 図1は,下顎第一小臼歯の髄腔開拡とその透明標本の一例である.頬舌的に長い円形となっており,2根管で,根尖部は網状根管である.こういう形はきわめてめずらしい. 一方,図2の根管は単純な形態である.髄腔開拡をして根管口を見ても,根管形態を推測する手がかりは少ない.図1,2の髄腔開拡から根管形態の違いを判断することはできない. 主根管の他に,もう1根管や側枝・根尖分岐があると,その根管は複雑に見える.複雑な根管の出現率は高くないが,根管治療に対する反応は良くないと考えられる(図3).処置できない根管や側枝などが増えるからである.根管治療をして成功する割合は単純な根管のほうが高い. 図3は,筆者の想像する根管治療の再発と根管形態の関係図だが,当たらずとも遠からずだと思う.成功率は全体で90%だとすると,単純な根管ではもっと高くて,複雑な根管ではもっと低い.10%の成功しなかった症例が再治療の対象となる.それらの症例に対する成功率は少し下がって60%くらいになるだろうが,単純な根管より複雑な根管のほうがやはり成功率は低い.治療のやり直しが繰り返されればされるほど,複雑な根管が残っていく.クロー序図1a,b 下顎第一小臼歯の髄腔開拡の一例(a)とその透明標本(b).根管にはインディアンインクを注入して観察しやすくしている.根管の分岐と多数の管間側枝により網状根管となっている.図2a,b 下顎第一小臼歯の髄腔開拡の一例(a)とその透明標本(b).本例の根管は側枝も湾曲もなく,太い根管が1本根尖まで通っているだけである.複雑な根管形態と単純な根管形態abab

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