マイクロデンティストリー YEARBOOK 2019
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PART1PART2PART3PART436別冊the Quintessence 「マイクロデンティストリー YEARBOOK 2019」一般診療へのマイクロデンティストリーの活用1はじめに 1960年代半ばに世界初のコンポジットレジンが発売されて以来,ボンディングシステムとあわせて物性の向上が図られ,直接修復においてアマルガム修復からコンポジットレジン修復へと主軸が替わってきた.現在のコンポジットレジンはフィラー形状の発達などにより,優れた滑沢性や耐変色性,エナメル質と遜色ない耐摩耗性を有している.ボンディングに関してはエナメル質,象牙質の強度を上回る接着強度を有しているため,歯の一部修復において材料的にもっとも優れているといえる. ところが,セラミックスと比較するとコンポジットレジン修復は変色したり縁が染まったり,すり減りや脱落が起こりやすいなど,いまだに負のイメージを払拭できていないため,お手軽で安価な一時しのぎ的修復と誤解されやすい. 材料的な優位性と結果に対する負のイメージには大きな矛盾がみられるが,その原因は手技の確実性にあるのではないかとの考えに至り,手技の確実性を向上させることを目標に,ラバーダム防湿などのフィールドコントロール1とマイクロスコープによる拡大視野下でのコンポジットレジン修復を行ってきた.本稿では,拡大視野下において満足できるコンポジットレジンの充填法に焦点を絞って紹介させていただく.フロータイプのレジンを用いた歯頸部充填法 歯頸部のコンポジットレジン充填は,不適合や接着不良などのエラーが出やすい難易度の高い処置であり,マイクロスコープなどによる拡大視野下での確実な手技が求められる.また,マイクロスコープを用いて行う処置としては患歯を正面に位置づけることができ,ミラーテクニックを必要としないため,マイクロスコープの初心者でも比較的に取り組みやすい処置だと考える. 一般的な歯頸部充填の予後不良な場合は,歯冠側のエナメル質マージンは比較的良好な状態であるのに対し,歯根側の象牙質マージンの状態が悪く色素の侵入や不適合が散見される(図1).これは,接着強度の異なるエナメル質と象牙質もしくはセメント質に対してコンポジットレジンの重合収縮が影響し,接着強度の弱い側の接着が破壊されているのではないかと推察される.また,窩洞形成中の歯肉損傷による出血や充填操作中に唾液や歯肉溝滲出液などのコンタミネーションが起きていることも影響している可能性がある.これらの悪影響を回避する歯頸部充填法を解説する.マイクロスコープを用いたコンポジットレジン修復菅原佳広日本歯科大学新潟病院総合診療科連絡先:〒951‐8580 新潟県新潟市中央区浜浦町1‐8

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