マイクロデンティストリー YEARBOOK 2019
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PART1PART2PART3PART420別冊the Quintessence 「マイクロデンティストリー YEARBOOK 2019」マイスタイル顕微鏡 顕微鏡治療における術者のポジションは,一般的に12時が推奨されることが多く,初心者はまずそこから練習するのがよいと思う(図14,15).しかし,診療スタイルにより術者の位置はさまざまに変化して当然であり,いつまでも12時にこだわることは臨床の可能性を狭める. 根管治療だけなら同じ歯を同じ方向から観察することがほとんどなので,治療中に大きく顕微鏡を動かす必要性は少なく,12時に位置していたままで多くの場合,問題ないと思われる.しかし,筆者のように一治療時間内に多種の治療を組み合わせている場合,そうはいかない.そもそもポジションとは治療部位・治療内容はもとより,顕微鏡の位置・ユニットの構造でも変化するはずである.たとえば同じ歯の支台歯形成といえども,頬側を観察するのと舌側を観察するのでは,ミラーの位置づけだけではなく,ポジションも変わる(図16~23).筆者の場合,9時~11時の間で位置を変えることが多い.また,下顎右側大臼歯部の治療は,筆者の場合,9時から行うほうが明らかに自然である(図24,25). ポジショニングで筆者が重要と考えるのは,つねに体幹を意識し安定させることである.治療とは小手先だけで行うものではなく,それを支えるためにできるだけ脇を締め体幹を安定させることが基本である.たとえば椅子の肘当てに重心が乗り,体幹が崩れた姿勢になってはいけない. その椅子であるが,よくどのようなものが良いかが議論になり,肘当て付きのものを推奨する方が多い.筆者も肘当てを試してみたが,頻繁にポジションを変える臨床スタイルには肘当てはかえって煩わしく,また脇を締め体幹が安定している限りはあえて必要ないことに気づいた.外科手術時は立位になることも多く(図26~29),肘当ては不要というのが筆者の結論である. 肘当てはそれに頼りすぎて体幹を崩す原因にもなりかねないが,治療中にポジションをあまり変えない臨床スタイルであればあってもよいと考えている.それよりも椅子が具備すべき条件とは,座面の高さと角度・腰の当たり具合が容易に調整できることではないだろうか(図30). 注意すべきは,決して顕微鏡の位置に体や顔を合わせてはいけないことである.すなわち患者の位置ポジショニング11図14,15 上顎前歯の治療は12時の位置が行いやすい.介助者は3時に位置し,顕微鏡からの画像はユニットのテーブルに設置された11.6インチモニターを見る.1415

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