YEARBOOK 2019 歯周組織再生療法のすべて
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治療の実際 歯周基本治療終了後,垂直性骨欠損をともなう深い歯周ポケットを有する歯に対し,エムドゲインゲルを用いた歯周組織再生療法を施術した.歯間幅,エックス線写真上における垂直性骨欠損角度および歯槽骨の欠損形態を基に,CortelliniとTonettiによる骨内欠損に対する歯周組織再生療法施術時のディシジョンツリー8,9(表1)に従い,切開法および骨移植術併用の有無を決定した.すなわち,再生療法施術部位はすべて歯間幅が2mmより広かったため,Modied Papilla Preservation Technique10(MPPT)(図3)にて切開を行った.さらに₃遠心は骨欠損角度が40°かつ杯状の骨吸収を呈し(図7d,e),₆近心は骨欠損角度が30°であったがⅡ度の根分岐部を含有し(図8c,d),また₆遠心は1壁性の骨欠損形態であったため(図9c),すべての部位に対してスキャフォールドとして骨移植術を併用した(図7g,8f,9d). 侵襲を考慮し,患者と話し合いのうえ自家骨は採取せず,過去の経過良好とされる臨床報告11も参考にして,本ケースではすべて脱タンパクウシ骨基質(Bio-Oss)を移植した.なお,本症例当時はBio-Ossを用いていたが,吸収のかなり遅い材料であり,まれに重篤な感染をきたすことがあるため,現在移植骨を用いる場合には,吸収性骨補填材料β-TCP(テルフィール)を移植している. 縫合にはすべてGore-Tex縫合糸を用い,基底部における内式交叉マットレス縫合(図3)によるスリングスーチャーと,単純縫合2糸によるクロージングスーチャーにて,確実な創面の閉鎖を図った(図7h~j,8g,h,9e). 歯周組織再生療法時に留意すべき点は,挫滅創を生じさせず一次治癒を促すための骨面に達する確実な切開,適切なデブライドメント,エムドゲインゲル塗布時における厳密な止血および的確な縫合による創面の確実な閉鎖である.治療図7a 2015年1月.₃頬側面観.₃はフレアアウトし,₃~₄間のコンタクトは消失している.図7b 同口蓋側面観.プラークコントロールは良好である.図7c ₃~₄間の幅が3mmと広かったため,MPPTを選択.まず頬側へ水平切開を加えた.図7d 乳頭部水平切開,歯肉溝内切開を経て歯肉弁を口蓋側へ剥離翻転し,デブライドメントを行う.頬側骨壁は残存している.別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2019」44PART2 症例で学ぶ歯周組織再生療法PART2

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