図解!遅延型吸収性膜を用いた 安全安心GBR
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図14e-1 骨膜剥離子を用いて,ていねいに全層弁を剥離,翻転し,完全に骨面を露出させる.剥離はMGJを最低3~5mm越える範囲まで行い,オトガイ孔が含まれる場合は,明示したうえでオトガイ神経の損傷を避ける.図14e-2 骨面に付着している軟組織はバックアクションチゼルやキュレットまたはロータリーエンジン(カーバイドバー)などを用いて,徹底的に除去する.■剥離爬を徹底的に行い,新鮮な骨面を露出させる.剥離は通常,MGJを最低3~5mm越える範囲まで行い,治療範囲にオトガイ孔が含まれる場合は,これをしっかりと明示したうえでオトガイ神経の損傷を避けるように十分注意する(全層弁でていねいに剥離する限り,神経損傷のリスクは極めて低い).4)減張切開 頬側歯肉弁の内面に対し,減張切開を行い,テンションフリーの状態で歯肉弁の歯冠側移動を可能にしておく(図14f-1, 2).減張切開の方法は歯肉弁断端をピンセットで把持し,近心-歯冠側方向に引っ張って歯肉弁にテンションをかけた状態で新しい#15メスを用いて行う.減張切開はMGJのすぐ根尖側に入れ,約500μm以下の浅い切開(メスの刃部の半分程度の深さ)とすることで,歯肉弁の結合組織内の太い細動静脈を切断することなく,骨表面上の非常に細い毛細血管のみを切断して,骨膜を切離することができる.こうすることで,減張切開による出血を最小限に抑えることができ,歯肉弁断端への血液供給を阻害することも軽減できると考えられる41, 42(図14g-1, 2,図14h-1~5). また,下顎臼歯部で注意すべきオトガイ神経に対しては,MGJのすぐ根尖側に切開を入れるため,通常は十分距離をとることができ,安全に減張できるが,オトガイ孔が近接している場合,オトガイ孔から5mm以上離すよう注意することが重要である. オトガイ孔から5mm離せない場合,骨膜剥離子などの鈍的な器具を用いて歯槽粘膜内の線維を伸ばすように減張すると効果的である. 頬側歯肉弁の減張切開のみで不十分な場合,舌側歯肉弁に対しても同様に減張切開を行い,歯肉弁の伸展性を大きくすることもあるが,舌側は歯肉が薄いことが多いので,パーフォレーションしないよう配慮する必要がある.とくに顎舌骨筋線より根尖部では重要な神経,血管が走行しているため,この部位には決して切開を加えないよう注意している(上顎の場合,口蓋側歯肉弁に減張切開を加えられないため,頬側歯肉弁を大きく形成することで十分な伸展性の確保を目指す). 減張切開は必ず歯肉弁の端から端まで加え,1本の切開線になるように配慮している.歯肉弁をテンションがかからない状態で歯冠側に引き上げ,歯肉弁の伸展性を確認するが,目安としては隣接歯の歯冠が覆えるぐらい伸展性が得られれば十分と考えている.増大量や増大方向に対して十分な伸展性が得られているかについて,骨移植材や膜の設置などを行う前に確認しておくことが重要である. さらに,骨隆起や骨鋭縁などを削除する,厚い歯肉弁を適度の厚みにトリミングすることも歯肉弁の一次閉鎖に効果的である.減張切開を加えるタイミングは,通常,歯肉弁を剥離した後,ただちに行う.第3章 インプラント周囲の骨の裂開,開窓への対応 ~吸収性膜を用いたGBR~055図解! 遅延型吸収性膜を用いた安全安心GBR

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