図解!遅延型吸収性膜を用いた 安全安心GBR
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hi■自然なスキャロップ形態の獲得図8h, i ソーサライゼーションにより自然なスキャロップ形態が得られ,周囲の天然歯と調和した修復となっている.上部構造も移行的な形態を付与しており,清掃しやすい状態となっている.インプラントの歯肉ラインは1mm根尖側に位置しているが,臼歯部でこのことが問題になることはまずないと思われる.また,CBCT所見から馬蹄形の歯槽堤が得られていることが確認できる.3清掃性を考慮したインプラント治療:臼歯部 次に,筆者が長年にわたって実践している清掃性を最重要視したインプラント治療を紹介したい. 臼歯部において,インプラントを埋入する際に必要となる歯槽堤は頬舌的骨幅が骨頂部で約6mm,骨頂部より1~2mm根尖側の位置で約8mmとなり,形態は生理的骨形態が有する馬蹄形(図8a)を理想的と考えている.筆者はこのような歯槽堤に対し,通常,インプラントのプラットフォームを骨頂に位置づける骨縁埋入を実践しているが,このとき,インプラント周囲の頬舌的な骨の厚みは約1mmとなる. インプラントはハイブリッドタイプ(高さ1.25mmのカラー部がマシーンサーフェイス,スレッド部はラフサーフェイスの構造をもつタイプ)を使用している(図8b).二次手術時にアバットメントを連結し(図8c),ソーサライゼーションによる辺縁骨の吸収(骨吸収の垂直的距離は1~1.5mm,水平的距離は1.3~1.4mm)が生じると,1mmしかない頬舌的な骨の厚みでは骨壁は残らずに,カラー部周囲の辺縁骨はすべて喪失することになる(図8d).その結果,頬舌的に垂直性骨欠損は生じず,頬舌的に約2mmの骨の厚みをもつ生理的な馬蹄形の骨形態(図8e)に落ち着く. 一方,近遠心的には1mm程度の浅い骨欠損ができるが,露出したカラー部はマシーンサーフェイスである(図8f)ため,清掃性の高い状態を維持できると考えている.この方法では,ソーサライゼーションにより頬舌側の骨の高さが約1mm低くなり,それにともなって歯肉縁の高さも約1mm根尖側に下がる(図8g)が,臼歯部において,そのことが問題になることはほとんどなく,逆に骨の高さが減らない歯間部との段差が自然なスキャロップ形態の獲得に効果的にはたらく(図8h, i).また,本法ではrunning roomを約3mmにコントロールでき,清掃性と審美性の両立を図ることができる.頬舌骨が吸収してできる歯肉の自然なスキャロップ形態に対しては,清掃性を重視したストレートカントゥアを付与し,力のコントロールを考慮して天然歯よりやや小さめに設計した上部構造(図9a~d)を装着する. 先述の通法に従ったインプラント治療では,頬舌的に高い位置に骨壁が残ることによって歯肉の高さが維持されるため,歯間部と頬舌側との間に歯肉の段差が生じず,上部構造にオーバーカントゥアを付与して無理にスキャロップ形態を作ることになり,清掃性だけでなく,審美性を達成することも難しくなる. また,埋入部位の歯槽頂部歯肉の厚みが厚い(4mm以上)場合は,ハイブリッドタイプのインプラントをマシーンサーフェイスのカラー部が1mm程度露出するよう,骨縁上埋入することにより,ソーサライゼーションをコントロールし,インプラント辺縁骨の吸収を最小限に抑えることができる(図10a).021図解! 遅延型吸収性膜を用いた安全安心GBR第2章 GBRの目標 ~インプラント周囲骨についての考察~

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