CTと動画が語る サイナスフロアエレベーションの真実
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0121章 上顎洞の解剖と生理 多列線毛円柱上皮の表面には、ゲル層とゾル層と呼ばれる2種類の粘液層が存在する。ゲル層は最表面に存在する粘弾性が高い粘液層で、上顎洞内に侵入した異物が付着しやすい性状になっている。また、ゾル層はゲル層の直下に存在する粘弾性が低い粘液層で、線毛が動きやすい環境になっている。線毛は鞭ふり様に運動するが、回復打の時期に線毛は湾曲した状態でゾル層のみを移動する(図4-i)。一方、有効打の時期に線毛の尖端部がゲル層内に食い込み、異物が付着したゲル層を一定方向に移動させる(図4-i)。つまり、多列線毛円柱上皮の線毛運動は、能動的に異物が付着したゲル層を自然口に向けて移動させて鼻腔へ排泄し、上顎洞内を清潔に保つ働きをしている(図4-j)4)。図4-e 別症例における上顎洞前壁の骨と上顎洞粘膜の脱灰標本(H.E.染色)。粘膜固有層に固有腺と導管が認められ、導管は多列線毛円柱上皮部に開口していた。多列線毛円柱上皮固有腺固有腺の導管開口部上顎洞前壁の骨図4-f eの拡大写真。導管は固有腺とつながり、固有腺で産生された粘液が多列線毛円柱上皮部に分泌されていると考えられた。固有腺導管 さらに、摘出した上顎洞粘膜の表面を、位相差電子顕微鏡写真で観察した。上顎洞粘膜の表面には無数の線毛が認められ、生理食塩液を用いた十分な洗浄にもかかわらず異物が付着していた(図4-g)。また、拡大写真では線毛の間に杯細胞が認められた(図4-h)。図4-g 上顎洞粘膜表面の位相差電子顕微鏡写真。無数の線毛と異物が認められた。(大阪歯科大学・中央歯学研究所・堀 英明先生のご厚意による)図4-h gの拡大写真。線毛の間に杯細胞が認められた(矢印)。図4-i 線毛運動のイメージ図。線毛は、鞭うち様に運動し、異物が付着したゲル層を一定の方向に移動させる。有効打<eective stroke>回復打<recovery stroke>ゾル層(粘弾性が低い)ゲル層(粘弾性が高い)線毛による鞭ふり様の往復運動図4-j 線毛運動は自然口に向かって起こり、能動的に異物が付着したゲル層を鼻腔に排泄している。gh4.近藤光子,玉置 淳.医学と医療の最前線 気道分泌の管理と治療.日内会誌 2012;101(12):3525-3532.

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