歯科医療コミュニケーション
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行動変容ステージ別にみる、患者さんの心理とアプローチ 無関心期:信頼関係の構築に専念無関心期は、行動を変えようとする意思や気持ちがまだ表れていない段階です。まったく関心が向かないこの段階の患者さんに向けて、医療側が懸命にアプローチをしても、空振りに終わることとなります。これは、動機づけ(モチベーション)における「動因」と「誘因」を知ると理解できます。そもそも動機づけは、動因(患者さんの内面にある「○○したい」という気持ち)と誘因(患者さんの内面にある「○○したい」という気持ちを満たしたり後押しする、外殻の刺激や影響)から成り立ちます(図2)。行動変容は、外からの影響(誘因)により強化された動因によって成り立つため、無関心期では患者さんの健康に対する意思や欲求そのものがないことから、アプローチが難しいことが理解できます。むしろこちらのアプローチに対して、患者さんに心理的防衛がはたらき、拒否的・抵抗を示すことになるでしょう。では、無関心期にいる患者さんには、何をすべきなのでしょうか。「信頼関係を構築し、深めることに専念する」というのが筆者の見解です。患者さんからの信頼が得られない限り、こちらの話にも耳を傾けてくれませんし、治療への協力も得られません。まずは焦らず、1章で解説されたようなラポールの形成▼21ページや治療に必要な情報収集を行いながら、患者さんの悩みに共感し寄り添う姿勢を示すといったコミュニケーションを図っていきましょう。図2 動機づけにおける動因と誘因の例。この例では、患者さんの動因(歯を残したい)に対し、歯科衛生士の誘因(解説や指導)が大きく影響し、動機づけが成功したたものと考えられる。できるだけ歯を残したいなぁこの部分を重点的に、歯ブラシを当ててみてはどうですか?患者さんの願望(動因)。➡このままでは行動変容に至らない行動変容に向けた動機づけができた歯科衛生士による解説・指導(誘因)。➡患者さんの動機が強化される歯科衛生士さんの言うとおりにしたら、歯を残せそうな感じになってきた!これからもこの方法で続けてみるか6|行動変容を目的としたアプローチ107

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