歯科医療コミュニケーション
5/6

成功しません。飲酒習慣がある人も、深酒は身体に悪いと思いながらもついついお酒が進んでしまいます。口腔状況に合った適切な歯みがきも、モチベーションはなかなか保てません。医療における「行動変容」とはこのように、これまで培われ習慣化されていた生活や行動パターンがより健康的で望ましいものに変わり、習慣化し定着するようはたらきかけていくことを指します。本項では、患者さんが健康に向けてより良い生活や行動を維持していくために、歯科ができる行動変容に向けたアプローチを考えていきます。それにあたって、患者さんが行動変容のどの段階にいるのかを把握することが重要となります。 行動変容の構造を知ろう厚生労働省による保健指導プログラム*から、行動変容の過程**についてみていきましょう(図1)。行動変容には5つのステージがあり、それぞれが行動変容に向けた準備段階となっています。各ステージにおいてさまざまに動く患者さんの心理状況に合わせ、歯科医療側が支援方法を変えていくことで、患者さんの行動をより健康的で望ましいものへと後押しするものです。では、行動変容の各ステージをもう少し詳しくみていくことにしましょう。図1 行動変容ステージ* **。行動変容に向けた準備段階のことで、5つのステージに分けられる。医療側はステージごとに支援方法を変え、改善していけるように支援する。1.無関心期6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期。(関心がまったくない)6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期。(そこそこ関心がある)1ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期。(やってみようと思う)明確な行動変容は観察されるが、その持続が6ヵ月未満である時期。(行動は起こしたが継続できるか不安)5.維持期明確な行動変容が観察され、その期間が6ヵ月以上続いている時期。(行動を継続する自信がある)仕事が忙しくて歯みがきどころではないよでも、やっぱり歯がなくなったら困るなぁ、歯みがきした方がいいのかな指導してもらったように、きちんと歯みがきをやってみよう効果は期待できそう! でも続けられるかな歯みがきの習慣ってすばらしい! 今では歯みがきしなければ気分が悪いほどだよ4.実行期3.準備期2.関心期*厚生労働省.標準的な検診・保健指導プログラム(確定版)<平成19年4月>.http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/pdf/02.pdf(2018年2月2日アクセス).**Prochaska JO, Velicer WF. The transtheoretical model of health behavior change. Am J Health Promot. 1997;12(1):38-48.106

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る