歯科医療コミュニケーション
1/6

❸ 臨床能力 clinical competence医療者に要求される、臨床における専門職としての能力のことです。この能力は、「知識 knowledge」「技術 skills」「態度 attitude」の3つからなります。knowledgeattitudeskills生活者である患者さんとその周囲、さらに時代を見据えた臨床能力をもとう従来の歯学教育では、疾患中心の治療が行われがちで、学生は知識を徹底的に叩き込まれてきましたが、技術や態度に関する教育は不十分でした。しかし近年は、文部科学省の歯学教育モデル・コア・カリキュラム4導入によって、その問題が改善されつつあります。十分な知識を身につけていなければ国家試験に合格することはできませんが、知識だけで医療行為を行うことはできません。知識、技術、態度の3つの要素を不足なく身につけていることが、医療者に必要とされます。特に歯科においては、患者さんの大半が生活者です。ベッドで生活する入院患者さんとは違い、歯科に通院する多くの患者さんが仕事や学校、家庭で時を過ごし、周囲を取り巻くさまざまな人たちとかかわりをもって生活している一個人です。患者さんの抱える病やその治療過程・結果が、生活者である患者さんにどういった影響を及ぼし得るか、実際に及ぼしているのかという、心理社会的要素を理解する能力が必要とされます。さらに超高齢社会が進むにつれ、昔は通院不可能だった年齢や健康状態の患者さんが、投薬とバリアフリー環境に支えられ来院できるようになっています。人が口から食事をすることは「生きる尊厳」とされており、患者さんが「人間が生きることの意味」を享受するために歯科医療者の活躍が期待されます。う蝕や歯周病は慢性疾患であり、その治療やメインテナンスで歯科医院に長くかかわる患者さんも多くいます。しかしそうした患者さんが、脳梗塞などの疾患により要介護の状態に陥る場合があります。こうした場合や、がん患者さんへの継続的な援助を行う際、歯科医療従事者には人間の尊厳をケアできる臨床能力が必要不可欠となります。24

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る