インプラント武者修行
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78 二〇〇五年度に行われたITIワールドシンポジウム ミュンヘン大会では、世界のITIスカラー四五名のエントリーから八名がノミネートされ、シンポジウムではこの八名が競い合う形となったのです。いざ当日になると、それなりに緊張感が高まりました。ITIスカラーセッションで選出された人は当然のことながら皆優秀でした。私の発表の順番は五番目か六番目だったように記憶していますが、やはり緊張していたのでしょう。あまりよく覚えていません。 八名の演者は、決められた席に順番に並んで座らされていましたが、優秀だとわかっている人たちの発表は、聞かない方が良いと思い立ち、トイレに行く振りをしてこっそり会場の外に出ました。会場の外には長椅子が置いてありました。ちょうどよく、会場内へ出入りする人が扉を開けるたびに、今誰が発表しているかの様子が見えました。私はその長椅子に腰掛け、自分の発表内容に集中し、他のことを一切考えないようにするために、持参したCDプレーヤーのイヤホンを耳に押し込み、ベートーベンの交響曲第九番、第一楽章冒頭部分の、何も存在しない無から宇宙が誕生する時のような、無限の創造力を想起さITIワールドシンポジウム ミュンヘン大会でのアワード受賞

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