生体に優しい総義歯製作法
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治療用義歯277Fig 35a ダイナミックインプレッションに使用する印象採得材は経時的に加わる咀嚼による物理的圧力により,液成分の可塑材が溶出しアルコールが抜けることで硬くなるアクリル系軟性裏装材COE-SOFTを選択し,まず外側弁の形態と辺縁の長さを採得していく.COE-SOFTは液粉とも冷蔵庫で保存している.Fig 35b 上下顎ダイナミック印象のCOE-SOFT使用量.一次印象時に採得した基礎維持が保てている咀嚼粘膜部や内側弁部にまで軟性裏装材が流れてしまうと,印象材の厚みにより基礎維持が壊れてしまうため,印象採得材の1回の使用量が重要となる.冷やすと硬化遅延になり操作性が良好となるため,冷やしながら使用する.Fig 35c メーカー推奨の粉液比よりも液成分を多くし練和する.Fig 35d 無圧的印象採得で歯肉歯槽粘膜境を正確に採得できている場合,上顎義歯床辺縁の大幅な形態修正が必要ない場合が多い.Fig 35e,f 被圧変位量の調整を行った後,治療用義歯辺縁が不足している場合,辺縁(外側弁の形態)を先に決定する.必要以上の辺縁の長さや厚み(バルキー〔分厚い〕やオーバーボーダー〔歯肉歯槽粘膜境を越えた辺縁〕)は維持が低下減弱し,装着中の違和感に繋がるため一部分ずつ軟性裏装材を薄く敷いていく.厚みが2mm以上になる場合には,軟性裏装材の硬化が期待できないため中心部を削除し,即時重合レジンに置き換え調節する.軟性裏装材を口腔内に挿入するとき,口角や口腔周囲組織などに付着しないように細心の注意を払う.Fig 35g,h 下顎舌側面インプレッションメイキング.下顎辺縁設定は,舌側の顎舌骨筋線より下部の筋肉の動きが影響するエリアの形態をまずは設定する.顎堤吸収の状態や,舌骨筋群や咽頭収縮筋の影響で舌側の義歯床辺縁は,大きく形態を変える.顎位のリハビリテーションが起こることでも,舌側辺縁形態が変化する.Fig 35i,j 下顎頬側インプレッションメイキング.頬棚部の辺縁の長さとフレンジの形成は,下顎義歯の維持に強い影響を与えるため,個々の解剖学的形態を触診・視診を交えながら十分に見極めていく必要がある.治療用義歯の辺縁形態の決定acegibdfhj

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