生体に優しい総義歯製作法
2/6

印象採得075総義歯用既製トレー アルジネート一次印象では,既製トレーを選択しなければならない.現在,多くのトレーが発売されており,それぞれに特徴がある.しかし,1種類のトレーでさまざまな状態の顎堤の条件を満たすものはなく,常に数種類のトレーを用意しておくことが大切である.どのメーカーのものを使用するかではなく,顎堤形態に一番近いものを選択することが大切である(Fig 20).1.トレーの選択 トレーが大きすぎると印象体の歯肉歯槽粘膜境が不明瞭となり,小さすぎると顎堤粘膜に当たり,印象体の変形の原因となってしまう. トレーの選択のポイントは以下のとおりである.・トレーに圧が抜ける遁路が開いている.・フレームが硬く,フレーム自体の変形がない.・滅菌ができる(ディスポーザブルを除く).2.上顎トレーの選択の基準(Fig 21,22)・トレーの幅は上顎両側第一大臼歯相当部の頬側最深部間距離に近いもの(Fig 21①).・小帯の動きを干渉しないもの(Fig 21②).・口腔内を診断し設定したい義歯床後縁(口蓋小窩付近)より5mm程度後縁が長いもの(Fig 22).3.下顎トレーの選択の基準(Fig 23)・頬唇側の辺縁は過長にならないもの(Fig 23①).・左右レトロモラーパッドを完全に覆い,かつ接しないもの(Fig 23②).・小帯の動きを干渉しないもの(Fig 23③).ストッパーの付与と辺縁の調整 印象採得時に既製トレーの金属や樹脂材が粘膜と接触すると,粘膜は大きな局所被圧変位を起こす(Fig 24a).トレーが接触した場所が凹み,その周囲の粘膜は隆起を起こす.このような2重変形を起こした印象体は粘膜面不適合となる.そのためストッパーを付与し,直接トレーと粘膜が接触しないように調整する(Fig 24b,c). ストッパーを付与したトレーの辺縁の長さは,適切とは限らないため不足分の調整をする(Fig 24d).一次印象の印象体辺縁は,歯肉歯槽粘膜境付近に設定する.そのため既製トレーの辺縁は,アルジネート印象材挿入分の隙間,歯肉歯槽粘膜境より2~3mm程度アンダーな状態で設定する(Fig 24e,f).それ以上の大きな隙間は,Fig 20a さまざまな無歯顎用既製トレー.Fig 20b 有歯顎用リムロックトレーの使用は,遁路がないことと顎堤形態に沿っていないため,無歯顎時の印象には不向きである.総義歯用既製トレーの選択

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る