Digital DentistryYB2022
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 CAD/CAM冠は2014年4月に診療報酬改定で新規収載された医療技術である。CAD/CAM冠の定義としては、高物性のレジンブロックを材料に歯科用CAD/CAMシステムを用いて製作した全部被覆冠であり、この時点では小臼歯部限定での使用が承認された。表1に2014年4月から2022年4月までに保険収載されたCAD/CAM冠および非金属材料の経過を示す。現在ではCAD/CAM冠は一部条件付きではあるが前歯・小臼 これまで日本の保険制度ではインレー・クラウン・ブリッジなどの歯冠修復材料として、金銀パラジウム合金がもっとも高頻度に使用されてきた。たとえば、小臼歯部の全部被覆冠は、金銀パラジウム合金を材料にした全部被覆鋳造冠(以下、FMC)が約80%を占め、大臼歯部ではすべてFMCであった(図1)。 金銀パラジウム合金は1956年に「歯科鋳造用金銀パラジウム合金」としてJIS規格化された日本独自の歯科用合金である。銀を主成分にしているため高カラット金合金よりも安価であり、しかも鋳造性や物性に優れて歯・大臼歯のすべての部位に適用することが可能である。しかし、これまで小臼歯からはじまり徐々に適応拡大することができたのは、CAD/CAM冠用材料・接着システムの改良とそれにともなった技工サイドにおける歯科用CAD/CAMシステムと診療室における適切な術式の確立が要因となっている。 そこで、本編ではこれまでのCAD/CAM冠と取り巻く環境の変遷を振り返る。いるため、歯冠修復物だけでなく義歯のクラスプ、バーなどにも使用されてきた。しかし、1980年代以降から顕著になった貴金属価格の変動による金銀パラジウム合金価格の高騰(図2)や歯科用金属が原因となる金属アレルギーの問題を解決するために、金銀パラジウム合金に代わる新しい歯冠修復材料が求められるようになった。 一方、1970年代から歯科用CAD/CAMシステムの研究開発が始まり、従来の歯科精密鋳造法では加工できなかった材料を切削加工によって高精度に成形するこ17FMCHJCCAD/CAM冠(%)900807060504030201020132014201520162017201820192020(年)47.9%41.1%11.0%図1 小臼歯部の全部被覆冠に用いられる材料の時代による変化。CAD/CAM冠の現状と可能性はじめに:CAD/CAM冠の変遷と現状CAD/CAM冠保険収載前

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