SAFE Troubleshooting Guide Volume 3 外科的合併症編
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5章 サイナスリフトのトラブルトラブル 患者は45歳、男性。既往歴に特記事項なし。 上顎無歯顎の右側臼歯部の残存歯槽骨高径が約1mmで、かつ上顎結節にインプラント埋入可能な骨量がなく、同部にサイナスリフトを計画した(図1-a、b)。インプラント埋入予定部位の上顎洞底に比較的低い3mm程度の隔壁が2つあり、慎重に上顎洞粘膜を剥離したにもかかわらず粘膜の裂開が生じ、所定の範囲までの上顎洞粘膜剥離終了時には直径約25mmの大きさとなった(図1-c、d)。問題提起 通常上顎洞粘膜の厚みは0.2~0.5mmと薄い。適広範囲の上顎洞粘膜裂開① 即日対応症例5-1機械・構造的合併症補綴的・技工的合併症生物学的合併症外科的合併症審美的合併症患者由来性合併症Factor(①外科的な侵襲、②高度な知識・技術、③長期的な治療期間、④高額な治療費)1トラブルおよび問題提起(マテリアル)正な範囲まで上顎洞粘膜剥離を行なった場合は、約20%の症例で粘膜裂開が生じるとされており、その中でも隔壁が主な原因である。隔壁の処理法は、隔壁の高さが、①4mm未満、②4mm以上でインプラントの長径未満、③4mm以上でインプラントの長径以上で異なる。 上顎洞粘膜に裂開が生じた際は、適正な処理をしなければ、上顎洞炎、骨補填材料の溢出およびインプラントの上顎洞迷入等の合併症を引き起こしてしまう。したがって、上顎洞粘膜裂開の程度に応じた最善の処理法を行わなければならない。abLevel Ⅵ 専門機関への依頼を要するLevel Ⅴ ①~④の4つを要するLevel Ⅳ ①~④の3つを要するLevel Ⅲ ①~④の2つを要するLevel Ⅱ ①~④の1つを要するLevel Ⅰ ①~④を特に要さない上顎洞粘膜裂開cd図1-a、b 術前の右側上顎CT画像。上顎洞底に比較的低い3mm程度の隔壁が2つみられたが、上顎洞粘膜の腫脹は認められなかった。図1-c、d 慎重に上顎洞粘膜を剥離したにもかかわらず粘膜の裂開が生じ、最終的に直径約25mmの大きさとなった。118SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume3 外科的合併症編

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