SAFE Troubleshooting Guide Volume 3 外科的合併症編
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2-1 インプラント埋入時の顎骨内沈下は埋入予定位置より少し手前でスタックをしたため逆回転に続いて少しトルクを上げて正回転とし、この逆回転/正回転の操作を繰り返すと最後はスタックがなくなり、ほぼ所定位置まで埋入できた。しかし予定深度に達するか達しないかで突然ハンドピースから指に伝わる力が抜けて術者の視界からインプラントは消え、形成窩から血液が噴出した(図1-f)。問題提起 インプラントが顎骨に落ち込んだ際、どのように引き上げるべきか?2対処および解決方法(メソッド・シューティング) 結局、埋入窩に落ち込んだインプラントを取り出すために、破骨鉗子で頬側骨壁を慎重に取り除き、インプラントをダイヤモンドピンセットで掴んで抜き上げるように取り出した。圧迫止血後は同部へのインプラント埋入をせず、粘膜弁を縫合して一次手術を終えた。なお同部へ骨補填材料等の填入は行わなかった(図2)。トラブルの対処および解決方法 埋入窩から溢れ出す血液を吸引して同部を観察すると、インプラントが骨縁から約6mm骨内に落ち込んだ状態であった。インプラントドライバーを差し込み、リバースをかけて落ち込んだインプラントを引き上げようと思ったが、さらにインプラントが深く沈んでいくような感触を得たので即座に中止した。図2 一次手術直後のパノラマX線写真。撤去された₇部の皮質骨に欠損を生じていることが確認できるが、形成された埋入窩を確認することはできない。また、₆部のカバースクリューが浮いている様子から、術者がトラブルで動揺していた様子が想像できる。 二次手術を行い、その後スクリュー固定式のプロビジョナルレストレーションを製作した(図3)。当初の治療計画と異なるインプラント本数および上部構対処結果 幸い下顎神経麻痺等の合併症は発現しなかったので、₅₆のインプラントについては約3ヵ月後に3対処結果(リザルト)図4-a、b (a)経過観察6ヵ月後のデンタルX線写真。埋入できなかった₇部の骨は正常な像を示す。(b)最終補綴が装着された口腔内写真。プロビジョナルレストレーションと同形状の歯冠を付与した。ba図3 プロビジョナルレストレーション装着時のデンタルX線写真。日常生活に支障が出ないか経過観察期間を設けた。57SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume3 外科的合併症編

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