SAFE Troubleshooting Guide Volume 3 外科的合併症編
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スペシャルサプリメント1-下歯槽神経麻痺インプラント治療後に痺れたら?①不適切な外科術式(切開・剥離・縫合)によるオトガイ神経損傷②ドリリングによる下歯槽神経損傷③インプラント埋入時の下歯槽神経損傷の3つが挙げられる。 とくに②③はインプラント特有の神経損傷であり、術中および術後の早急な決断と対応が求められる。 また神経損傷は、図2に示すようにⅠ~Ⅴに分類されておりI、Ⅱは神経の圧迫や伸展、血腫や浮腫等によって二次的に生じることから回復の可能性が高いが、Ⅲ~Ⅴになるとドリルやインプラントによる部分~完全な挫滅もしくは熱傷によって生じることから治癒することは極めて困難となる。下歯槽神経麻痺に対する対応 インプラントによる下歯槽神経損傷は外傷性の神経障害(表1)であり、埋伏智歯抜歯に次ぐ発症頻度(図1)となっている。特にインプラントによる下歯槽神経損傷の発症率は増加傾向を示しているだけでなく、埋伏歯抜歯と異なりインプラントが残留していることや骨結合してしまうこと、神経損傷後3ヵ月を経過すると神経系に永久的な変化が生じ、回復する報告はほとんどないことから可及的速やかな対応が必要であるといえる。インプラント手術における神経損傷の原因 インプラント手術における神経損傷の原因と機序については表2に挙げるように、図1 下歯槽神経損傷の治療手技別頻度1)。①直接機械的外傷(裂傷、切断、圧壊、伸展など)②外傷によって遊離された細胞内物質による神経の化学的損傷やヘモグロビンによる神経組織の刺激③骨内の内腔での持続的出血や瘢痕形成による虚血性外傷表1 外傷性神経障害の原因表2 インプラント手術における下歯槽神経損傷の原因と機序1)700605040302010(%)下顎智歯抜歯局所麻酔インプラント歯内療法根尖切除術中要因機序(間接または直接)ドリリング時の神経損傷下顎管への部分的な穿刺間接:血腫および二次的な虚血下顎管の貫通直接:機械的損傷ー侵害・切断・断裂 および/または 下歯槽神経の圧迫や一次的な虚血イリゲーションによる化学的(細胞毒性)損傷直接:下歯槽神経の変性熱傷直接:下歯槽神経の変性埋入時の神経損傷下顎管への部分的な穿孔間接:血腫 および/または 破片の貯留、圧迫および二次的な虚血下顎菅の貫通直接:機械的損傷ー下歯槽神経の侵襲・損傷・断裂 および/または 圧迫および一時的な虚血不適切な外科術式による神経損傷切開・減張切開直接:オトガイ神経の損傷または切断剥離直接:粘膜の反転および復位、圧迫によるオトガイ神経の損傷縫合直接:縫合時のオトガイ神経の圧迫48SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume3 外科的合併症編

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