SAFE Troubleshooting Guide Volume 3 外科的合併症編
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サイナスフロアエレベーションにおける手術併発症の予防と対応-手術に対する基本的な考え方-術後画像検査所見と手術所見との比較検証 サイナスフロアエレベーションにおいても、以上の術前、術中、術後の診断項目を当て嵌めて考えておくとよい。すなわち、手術対象である「上顎とその周囲」に関わる臨床解剖、病理、画像診断の知識を基本とした診断プロセスを構築しておく必要がある。なお、サイナスフロアエレベーションはクレスタルアプローチとラテラルアプローチとの二法の術式があるが、どちらを選択するかについても、上記の術前診断項目を大いに参考にして決めていくことになる。3-2 一般的外科基本手技、インプラント埋入手技の重要性 インプラント関連手術の中で、サイナスフロアエレベーションは外科的要求度の高い術式である。 術野の展開、メス・剥離子・ピンセット等の手術器具の選択と操作、縫合法といった外科基本手技を巧みに、流れるように組み合わせ、正確で愛護的な手術を行うべきである。 たとえばラテラルアプローチにおいて洞底部造成と同時にインプラントを埋入する場合、母骨の高さに5割に該当する10編が上顎洞に関連した報告であった(2016年8月現在)3)。 これらのことから、上顎洞関連手術であるサイナスフロアエレベーションは手術併発症という観点から大いに注目すべき術式であり、その予防と対応に対する知識は必要不可欠と言える。3 手術併発症の予防3-1 診断の重要性 すべての手術において診断はきわめて重要だが、それは術前だけでなく、術中、術後も続くことを忘れてはならない。このステップ・バイ・ステップでの診断の連携が手術併発症の防止と適切な対応につながってくる。以下に術前、術中、術後における診断ポイントを提示する。・術前診断:臨床解剖の理解、病理学的状況の把握、画像分析、模型分析、術式の選択、手術シミュレーション・術中診断:あるべき解剖構造の確認、病的状況の確認、術前画像所見との照らし合わせ、併発症発生時の迅速な原因究明・術後診断:併発症の有無の確認、術中状況の回顧、020406080100120眼窩下神経損傷舌神経損傷その他下歯槽神経損傷上顎洞内インプラント迷入上顎洞炎心身医学的障害オトガイ神経損傷異常出血(局所的原因)インプラントの骨外穿孔顎骨壊死術後蜂窩織炎軟組織に対する長期的障害隣在歯の損傷誤飲・誤嚥(手術中)異常出血(全身的原因)2009年2010年2011年合計020406080100120軟組織に対する長期的障害その他上顎洞炎下歯槽神経損傷上顎洞内インプラント迷入心身医学的障害オトガイ神経損傷インプラントの骨外穿孔異常出血(局所的原因)顎骨壊死隣在歯の損傷術後蜂窩織炎舌神経損傷異常出血(全身的原因)誤飲・誤嚥(手術中)2012年2013年2014年合計図1 「インプラント手術関連の重篤な医療トラブル」発生件数(2009年1月~2011年12月)。インプラント手術に関連したトラブル調査(公益社団法人日本顎顔面インプラント学会)、2009〜2011より改変。上顎洞関連のトラブルが2位、3位である。図2 同2012〜2014の調査結果より改変。上顎洞炎が1位となった。上顎洞内インプラント迷入も3位である。SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume3 外科的合併症編19

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