SAFE Troubleshooting Guide Volume 3 外科的合併症編
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巻頭特別企画サイナスフロアエレベーションにおける手術併発症の予防と対応-手術に対する基本的な考え方-など)の副損傷」を中心に、本術式で特有な併発症である「上顎洞内インプラント迷入」も含めて述べていきたい。2 上顎洞関連インプラント・トラブルの現状 公益社団法人日本顎顔面インプラント学会ではインプラント手術に関連したトラブル調査を3年毎に行っているが、2009〜2011年の調査において、下歯槽神経損傷、上顎洞内インプラント迷入、上顎洞炎の順に多かったトラブルが、次の2012〜2014年の調査では、上顎洞炎、下歯槽神経損傷、上顎洞内インプラント迷入の順となり、上顎洞炎が3位から1位となった。 そして上顎洞炎と上顎洞内インプラント迷入とを併せると、上顎洞に関連したトラブルがもっとも多いことが窺える1、2)(図1、2)。 また、トムソン・ロイターの流れを組むWeb of Science(クラリベイト・アナリティクス社、米国)の調査において、「インプラント術中併発症」をキーワードとした引用回数上位20位までの論文の内、実1 はじめに 手術に伴う三大併発症には、「出血」、「感染」、「臓器の副損傷」がある。また、これらを防止するには、術前の十分な診断がもっとも重要であり、また、不幸にして併発症が生じた場合でも、術中、術後の迅速かつ適切な診断(判断)が併発症を重症化させないために必要となってくる。したがって当然のことながら、当該手術の併発症に関わる診断と対処法を知る者のみが術者になり得るのであって、未熟なうちは指導医の下で手術を行うか、専門家に依頼するかを選択して、患者により良い手立てを提供しなくてはならない。 サイナスフロアエレベーションも、手術であるがゆえに上記は然りである。起こりうる手術併発症の知識が十分で、対応能力が備わっていなければ手術を計画してはならない。  本文では、サイナスフロアエレベーションに関わる手術併発症の予防と対処に少しでも役立つよう、「出血」、「感染」、「臓器(神経、上顎洞粘膜、隣在歯河奈裕正 Kawana Hiromasa慶應義塾大学医学部 歯科・口腔外科学教室SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume3 外科的合併症編18

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