咬合の謎を解く!
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◆理想的な咬合であっても,機能が正常に営まれるとは限らない!名探偵ナカムラの眼歯科矯正学が示す正常咬合であれば機能は正常に営まれるのか?3 矯正歯科治療では,術者が考える理想的な咬合を反映した診断用予測模型(セットアップモデル)にて,治療の最終段階における咬頭嵌合状態をシミュレートし,咬合高径の変化を考慮しながら,個々の歯の移動量や方向を診断するとしている. 歯科矯正学では,矯正歯科治療の最終段階における咬頭嵌合位を決定する際に,垂直的である咬合高径(咬頭嵌合位での上下顎間の垂直的距離)には留意しているものの,水平的な咬合関係である前後的および左右的な位置関係は一切不問としている.これでは,咀嚼などの咬合本来の機能については軽視していると言っても過言ではない. 結局,矯正歯科治療では機能より審美を優先していると言わざるを得ないであろう.あるいは,正常咬合を与えることで,機能も正常に営まれるとしたバイアスのかかった見方をしているのであろう. 補綴歯科治療でも,術者が考える理想的な咬合や歯冠形態を反映した最終補綴装置によって形作られる歯列や歯肉の形態をワックスにて事前に形成する診断用ワックスアップが一般化しており,とくに全顎におよぶクラウンブリッジによる咬合再構成やインプラント治療に多用されている.それゆえ,左右対称であり,かつ中心裂溝を基準に連続性のある,バランスのとれた歯列形態を目標にワックスアップがなされている模型を多く目にする.このような理想的な形態を付与することで,生体に調和した機能的な咬合面形態が完成するとしているのであろう.術者が考える解剖学的,形態学的に理想な咬合さえ作り上げれば,並行して機能が正常に営まれるとした不文律(暗黙のルール)が広く浸透していると言わざるを得ない.セットアップモデルの一例18POINT

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