臨床家のための矯正 YEARBOOK 2017
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図2 乳歯列期から永久歯列期に至るまでの治療経過.3歳4か月 叢生の状態と舌小帯の伸びが悪いため,定期的に日常の生活習慣の観察および予測される不正への指導として生活習慣を中心とした筋機能訓練を行っていくこととした.6歳1か月【筋機能訓練の確認】 上唇小帯の付着部位が変化していないため,普段から口唇をしっかり閉じるように再指導を行う.舌癖がある.歯が全体的に大きめなので叢生になる可能性がある.5歳8か月【食習慣と口唇の閉鎖を確認し,再度指導】 清掃状態が悪く,歯石が付着し,少し動揺がある.このままでは上顎前歯も早期に抜けて【舌の突出が強くなり開咬になる可能性が大きい】ことを説明した. 顎筋機能の改善を,本格的な筋機能訓練により,行っていきたいところだが,年齢的には,まだ生活習慣が正しい姿勢や正しい食べ方などになっていない.開咬気味の患者には,とくに口が開いていることの指導が必要になる.・食事中に口唇を閉じて食事をしてもらわなければ口輪筋が力をつけてこない(関連事項をみていき,どの生活習慣の中で何が開咬を起こす原因になっているかを推測しながら,検診を通して患者に伝え,除去する最良の方法を考える).・その他,鼻での呼吸の指導や鼻をかむ指導.・口の中にいっぱい詰め込むと,口唇が閉じられなくなるため,口唇力が付かなくなる.・食事中に体が曲がっていたり,顔が曲がってくる座り方が,咀嚼や口唇力を弱めてしまうことになっていることも忘れてはならない.・年齢によっても原因に変化が出てくるので,年齢に合わせるなど他の原因を調べ,生活習慣の中で,さらに細かい指導を何度も繰り返す必要がある.4歳9か月 ₁萌出.顎が狭く,歯が大きいため,凸凹の歯ならびになる可能性があることをすでに話した.嚥下時舌の前方突出が強くなったため【舌挙上の訓練】を行った.4歳8か月 乳歯の動揺が早いため,口唇を閉じてゆっくりと噛むように【食事の指導】を行った. ※途中乳歯の脱落が早く,乳歯列期内に永久歯の交換があり,萌出が早い場合を参照.5歳2か月 ₁₁がかなり大きく,舌の突出があるため,歯列不正になる可能性が大きい.これは口の中に一度に詰め込み過ぎと思われる.ひと口の量を少なくして,唇を閉じてゆっくり噛み,飲み込むときも唇を閉じて飲み込むように【咀嚼と嚥下の指導】を行った.乳歯列期混合歯列期▲5歳8か月▲6歳1か月5歳11か月【嚥下時に舌が前方へ突出してくる舌癖を確認】 6歳半をすぎたら診査したほうがよいこと,口唇を閉じるようにすることを伝える.そして,今までの指導と筋機能訓練の確認を行った.⇒訓練中の姿勢と顔の曲がりに注意すること.本格的筋機能訓練による改善の確認(日常の生活習慣・習癖などが改善され正しい姿勢で正確な筋機能訓練が可能か)⇒確認事項:生活習慣や病気・習癖が関わっている力・長さ・形のコントロールを良好な姿勢で本格的に行えるか?▲5歳11か月046臨床家のための矯正YEARBOOK 2017特集 成長期の開咬を考える 第Ⅰ部 スタディグループによる症例提示

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