多剤常用時代の歯科診療室における局所麻酔管理のすすめ
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61安全な局所麻酔注射を実践するにはⅢ2 神経を傷付けない伝達麻酔注射の実施法 針を孔内へ刺入し薬液を注入する唯一の注射法です.切歯孔(管)は口蓋正中線上で歯槽頂から5~10mmに存在し,孔の大きさは5~7mmあります.左右2本の神経が走行し,切歯管内から前歯枝が出ています.切歯孔から鼻口蓋神経が出て,上顎前歯部口蓋粘膜に分布します. 図Ⅲ-7は切歯孔での伝達麻酔注射です.この伝達麻酔注射では針を10mm切歯管内へ刺入します.そして歯根膜注射のように,刃面を左右へ向けて,両方向へ注入します.出血や紫斑の出現は少ないです. なお,この注入では強圧を必要とします.トルクの弱い電動注射器では注入することができません.切歯管へ針刺入・薬液注入する伝達麻酔注射手技2Question注射針と象牙質,骨の硬さを比較すると? 注射針は,なぜめくれるのか.針に用いている鉄が象牙質や骨より柔らかいこと.加えて,針先の形態は粘膜穿刺時の疼痛緩和を目的に,細く薄く鋭い針先形態なので,1回の接触でめくれてしまいます. 注射針は〝軟鉄〟に分類され,モース硬度は4です.骨のモース硬度は4~5,象牙質では5~6です.図Ⅲ-7 切歯孔への伝達麻酔注射(刺入後,刃面を左右に向ける)

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