多剤常用時代の歯科診療室における局所麻酔管理のすすめ
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60安全な局所麻酔注射を実践するにはⅢ2神経を傷付けない伝達麻酔注射の実施法 伝達麻酔法は浸潤麻酔に比較して効果の持続時間は長くなります.しかし,神経や血管を傷付けることもあります.したがって,注射の際には十分な解剖学的知識と安全・的確な手技が求められます. 操作の手順は,まず薬液を神経幹に作用させます.注射針の刃面の向き,針先の刺入部位を意識して,神経と血管を傷付けないように針を刺入し,吸引テストの後,注入,抜針を行います. 注射中に患者が不意に噛み締めたり,首を動かすと神経を損傷させてしまいます.患者の急な下顎の動きを緩衝するために臼歯部に吸引チップを当てます.とくに,抜針後には薬液と血液が穿刺孔から漏れ出すので,舌や咽頭へ流れ落ちないように確実に吸引します. 上顎骨の痛覚を支配する神経は,歯槽孔から顎骨へ入り分布します.歯槽孔は3~7孔,多くは20数孔あるといわれています.したがって,孔への薬液浸潤が歯槽孔伝達麻酔注射と考えます.刃面が骨膜から離れないように慎重に刺入する本法は,簡単なようで非常に難しい注射手技です.刃面を粘膜の逆に向け,穿刺・刺入し,その後180度回転させて薬液を孔へ向けて注入します.必ず粘膜の膨らみを確認してください. 針先をめくってしまい,その針で刺入と引き戻しを繰り返し,血管および血管網を傷付けてしまうと,鼻出血を発症することもあります. 図Ⅲ-6に刺入方向から見た注射のイメージを示します.INTRODUCTION 上顎神経の麻酔,歯槽孔への伝達麻酔注射手技1図Ⅲ-6 歯槽孔への伝達麻酔注射

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