多剤常用時代の歯科診療室における局所麻酔管理のすすめ
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39患者の持病に対する歯科診療室で必要なケアⅡ2 患者の常用薬と頓服薬(3)抗血栓療法下の高齢歯科患者【対処法】 冠血管の虚血,心筋梗塞の持病に対して抗凝固療法を受けている患者では,出血・紫斑がある部位,胸痛,背部痛,胃部不快感,左肩や腕の痛み,および下顎臼歯部の関連痛などの症状の有無をチェックします.なお,糖尿病を合併している患者では関連痛がないこともあります. 本邦では,50歳代に急性心筋梗塞が増加し,70歳代で虚血性心疾患の発症率が頂点となります. 抗血栓療法を受けている患者は高血圧,糖尿病,動脈硬化,心筋梗塞,脳塞栓や脳血栓などの既往を持ち,心筋梗塞や脳塞栓症などの再発・病状悪化の予防目的に多くの薬剤を併用しています. 抗血栓療法は抗血小板治療・抗凝固療法を用います.抗凝固薬は静脈血栓を予防し,抗血小板薬が動脈血栓を防止します.抗血栓療法にはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬,硝酸薬,β遮断薬,Ca拮抗薬,脂質代謝改善薬などを併用しています.図Ⅱ-2に抗血小板薬と抗凝固薬の違いを明記しました.【留意点】 診療に際しては,血栓,塞栓症を防止するために,歯科診療誘発ストレスの防止が基本です(図Ⅱ-3).生体情報モニタを活用し,患者の持病悪化,心筋梗塞,脳梗塞などの初期変化を見極め,適宜対応します.心拍,血圧,心電図波形を観察します.とくに心電図の虚血性変化をチェックします(図Ⅱ-13参照).図Ⅱ-2 経口抗血栓薬(血栓の予防薬)〈抗凝固薬〉 ワルファリン 直接トロンビン阻害薬 (ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩) 直接活性型Xa阻害薬 (リバーロキサバン,アピキサバン)・適応疾患 弁置換術後 深部静脈血栓症 心房細動(心原性脳梗塞)・原因 血流停滞で凝固因子の活性化・好発部位と血栓の種類 静脈にフィブリン血栓〈抗血小板薬〉 アスピリン チクロピジン クロピドグレル プラスグレル シロスタゾール・適応疾患 脳梗塞(アテローム型) 心筋梗塞 狭心症・原因 動脈硬化症・好発部位と血栓の種類 動脈に血小板血栓

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