多剤常用時代の歯科診療室における局所麻酔管理のすすめ
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38患者の持病に対する歯科診療室で必要なケアⅡ2患者の常用薬と頓服薬 診療に際しては,患者の常用薬と頓服薬の服薬状況を確認し,患者持参の薬剤を確保します.診療室・待合室・診療所内での患者急変に,即時に対処できるように準備します.ニトログリセリン舌下錠,気管支拡張薬の吸入剤,アドレナリンの筋肉注射キットなどを投与できるスキルも必要です. 著者の経験では,緊急時に「頓服薬はどこにありますか?」と患者に聞き,「黒いバッグ中のポケットに入れてある」と言われました.しかし鞄から探し出すことができず,具合が悪い患者にバッグを渡し,薬剤を取り出してもらったことがあります.そのときは危機感が高まりました. あなたには,どのような経験がありますか?(1)一見元気な高血圧と動脈硬化症の患者にも注意!【対処法】 過度の血圧上昇が継続したとき,手術前や手術中の血圧上昇に対して高血圧・狭心症治療薬,短時間作用型の降圧薬,Ca拮抗薬のニフェジピンカプセル剤〔アダラートカプセル5mg〕を内服させます.5~10分間安静を維持し,必要ならば1錠を追加します.【留意点】 舌下や鼻腔内投与では血圧低下や頻脈を誘発させるので禁止です.(2)冠動脈疾患:安静時では大丈夫,しかしストレスで!?【対処法】 顔面蒼白,冷や汗,絞扼感,激しい胸痛,背部や左側下顎臼歯部の痛みに対して,冠血管拡張作用がある狭心症治療・硝酸薬であるニトログリセリンスプレーを舌下へ噴霧,舌下錠を投与します.定量噴霧式・ニトログリセリン舌下スプレー剤(ミオコールスプレー0.3mg)は噴霧前にスプレー剤の作動を確認し,気管内へ吸引しないように舌下粘膜に向けて噴霧します.なお,3~5分間隔で3回スプレーしても効果がなければ心筋梗塞を疑い,救急応援を要請します.【留意点】 不適切または過剰な噴霧では心臓へ負荷をかけ,頻脈を誘発します.INTRODUCTION高血圧,冠動脈疾患,糖尿病1

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