臨床で困らない歯内療法の基礎
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第10章 MTAと穿孔への対応コンポジットレジンを用いた穿孔封鎖①図10-46 49歳,男性の上顎左側第一小臼歯のデンタルエックス線写真.他院で根管治療後に痛みが出たとのことで来院した.近心歯頚部歯質の透過性亢進および骨欠損が認められる.歯頚部外部吸収も疑われるが,外部吸収では通常これほどの骨欠損は出現しない.図10-47 ラバーダムを装着して患歯を観察すると,穿孔部から侵入してきた肉芽が見えた.前医では次回根管充填予定だったとのことで,綿栓が2本入っていた.根管形成も終わったつもりのようであったが,本来の根管は未処置だった.根管の探索方向を間違え,穿孔部を根管だと信じていたようである.図10-48 浸潤麻酔後に電気メスで肉芽を焼灼して穿孔の範囲を明瞭にした.また,穿孔部周囲の象牙質を一層切削して新鮮面を出した.図10-49 象牙質新鮮面に対してメガボンド(クラレ)とMIフィル(ジーシー)で穿孔封鎖を行った.図10-50 穿孔部からの出血はなく,あらためて本来の根管(矢印)へアクセスすることが可能となった.図10-51 根管形成終了後.穿孔部のレジン充填はほとんど見えない.穿孔部と根管の方向の相違が理解できる.図10-52 根管充填後のデンタルエックス線写真.図10-53 4年後のデンタルエックス線写真.歯頚部の骨は多少再生しているが,穿孔部に骨が接する位置までは戻っていない.穿孔封鎖材料がMTAではなくレジンだったためか,穿孔部が歯周ポケットを通じて口腔内と交通していたためか,あるいはその両方かわからない.不完全な治癒である.図52図53219

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