お母さんたちに伝えたい!歯並びの良い子に育てよう
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 すべての医療は,検査結果を基に診断し,その診断結果に従って治療方針を立ててから,治療を開始するのが通常です.ただ,「歯が並びそうにないから,顎を拡げる.」「上下の歯が反対に咬んでいるから装置をいれる.」というのでは心配です. 安全・安心な矯正治療のためには精密検査が不可欠です.矯正専門医が重要視している検査のひとつとして,頭部エックス線規格写真という横顔のエックス線写真があります.エックス線写真に写った顔の骨の形をトレースし,骨の形の特徴を表すために設けられている世界共通の基準点をコンピュータに入力します.すると,模式的な顔の形が描き出され,骨のサイズや形の特徴を表す計測結果が表示されます(図8).それらを患者さんの同年齢の平均値と比較することにより,問題点を把握していきます.同じ患者さんの治療前後の変化を把握することにも使用します. 出っ歯(上顎前突)の患者さんでも,骨の大きさに問題があって出っ歯になっているタイプと,骨の大きさに問題はないけれども,歯列の形や上下の前歯の角度に問題があって出っ歯になっているタイプがあり,それぞれ治療方針と使用する装置が異なります.顔の形の特徴によっても,装置のタイプを変えていきます. 反対咬合(下顎前突:受け口)の患者さんも同じで,上顎が小さい場合もあれば,下顎が大きい場合もあります.骨の大きさに問題はなく,前歯の角度だけが問題の場合もあります.下顎の伸びが旺盛になる思春期成長期に,反対咬合が再発しやすいタイプとそうでないタイプとをある程度予測することもできます. 顎を拡げる場合も,顔の形によって積極的に拡げてよいタイプと,拡げてはいけないタイプがあり,側方頭部エックス線規格写真の結果などで判断します. 子どもの矯正治療は,成長発育が終了し永久歯が生えそろって初めて結果が出ます.6歳で開始したとすれば約10年後です.それ以上を要する場合もあります.顔の骨格の特徴を捉え,将来の成長をある程度予測するための情報を提供してくれるのが側方頭部エックス線規格写真なのです.この頭部エックス線規格写真から得られた情報をしっかり活用することによって,より安全・安心な矯正治療が可能となります.安全・安心な子どもの矯正歯科治療に必要な検査とは?その8図8 頭部エックス線規格写真から抽出した基準点によって描かれた図や得られた計測値を基に,上下の顎の骨の大きさや形態の特徴,上下の前歯の角度などを把握した後,治療方針を決定する.39

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