咬合挙上をうまくなりたい
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43咬合挙上の検査(顔貌を計測)診察時点の咬頭嵌合位と下顎安静位,さらに術者からみて適正と思われる口唇閉鎖状態での開口位で,瞳孔から口裂までの距離,鼻下点・オトガイ底間の距離を計測する.これには坪根式バイトゲージ(YDM)が有効である.顔貌の正常・異常というのは,一般的にはきわめて主観的で,個々人で判断されものであり,一概に規定することはできない.しかし,咬合が関与する咬合高径の低下による顔貌の変化は,顔面高,すなわち下顔面高さの低下という現象で生じ,術者が感じるだけではなく,患者自身の主観評価からもわかる.よく知られているように,全部床義歯の対象となる無歯顎補綴では,顔貌計測値(図1)を用いる.つまり,「瞳孔から口裂までの距離(図1 a1)と,鼻下点からオトガイ底までの距離(図1 a2)が等しい」という根拠から,咬合高径決定の一助としている(Willis法).専用の器具としてWillisのバイトゲージ,坪根式バイトゲージがあり,広く臨床で用いられている.臼歯部咬合支持が欠如して,顔面高が低下するといわゆる「老人性顔貌」を呈するようになり,これはレオナルド・ダヴィンチの絵にも示されている(図2a, b).無歯顎患者のみならず,臼歯部咬合支持を欠く歯列欠損患者では,顔面高の低下を生じ,自然な顔貌が損なわれることがある.これを回復することが欠損補綴治療の大きな目的である.咬合挙上の検査のフロー4-2図1 左の図中a1=a2というのが,「正常」(acceptable)な咬合高径によって得られる関係である.*林ほか.全部床義歯補綴学,東京:医歯薬出版 1994:159より引用・改変.b3(d2)d1a2b2b1a1図2a,b a:ダヴィンチの描く老醜.b:上下顎無歯顎骨.abPART 2 咬合挙上のフローと臨床

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