インプラントオーバーデンチャーの臨床とエビデンスQ&A
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7474基本原則は4つある.とくに犬歯と側切歯の間にインプラントを埋入するのが原則A.Q.16IOD設計の原則 McGillコンセンサス1(Q.6を参照)以来,IODの代表的なものとなった下顎無歯顎症例に対して,2本のインプラントを使用したIODの設計の原則を図1に示し,それらの根拠を以下に述べていく.犬歯と側切歯の間にインプラントを埋入する 犬歯と側切歯の間にインプラントを埋入するのには,以下の3つの理由がある(図2).1)犬歯部に埋入するよりも側方力を小さくすることができる 筆者ら2の研究結果から,下顎のIODの支台としてのインプラントにおいて,臼歯部で咬合した際に生じる側方力がもっとも小さくなるのが正中部であり,そこから側方に移動するに従い,生じる側方力は大きくなる. したがって,下顎正中部に1本のみのインプラント支台を有するIODも成立する.これは,下顎における機能時の義歯の回転沈下が正中部を中心として生じるためで,中心から離れるにしたがって義歯床の動きの影響を受けやすくなるからである3. オッセオインテグレーションしているインプラントが側方力に決して弱くはないことが,動物実験でも,また傾斜埋入されたインプラントの例からも明らかであるが4,あくまでも炎症をともなわない場合である.オーバーデンチャーという床で被覆される場合には炎症をともなう可能性が高いため,側方力は極力小さくするほうがいいと考えるべきである.2)連結がしやすい インプラントが互いに傾斜を有して埋入された場合や,大きな咬合力を有する場合,あるいは顎堤の前後的傾斜から義歯が前方に移動しやすい症例では,バーによる連結が原則となる(図3). これら連結を要する症例の場合,両犬歯部へのインプラント埋入は避けなければならない.なぜなら,両犬歯部へのインプラントどうしをバーで直線的に結ぶと,義歯床が舌側に張り出し,舌房を侵害するからである(図4)5.犬歯-側切歯間では,デンチャースペース内に収まりやすい.3)義歯床の前後的な回転量を小さくすることができる インプラントが埋入された部位では義歯が安定するので,よく噛むようになる傾向がある.前歯部において,通常の全部床義歯では噛めなかった場合でも噛めるようになるが,その際,2本のインプラントを回転軸としてテコの原理で臼歯部の浮き上がり下顎の 2 本のインプラントによるインプラントオーバーデンチャーの設計の基本は?3章 設計・製作

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