女性患者さんを診る
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老年期・長寿期6.超高齢化社会における歯科医療のあり方 高齢者が安心して暮らせる地域であるためには,地域包括ケアが大切であり歯科もその一端を担うことが期待されています.単なる歯科医療を提供するだけにとどまらず,ほかの職種やサービス提供者,地域のコミュニティーと連携して,生活を見守り支えることが必要とされているのではないでしょうか. ほかの職種から歯科に対して期待されることは,食べられる口をつくってほしいということです.形態的な修復は当然必要ですが,それだけにとどまらず機能回復,能力を発揮できる口にしてほしいと思われています.なぜ調整を繰り返しても痛みが取れないのか,外れるばかりなのかと思っているのです.歯科医師はこの疑問に答えなければなりません.しかし,整形外科医と理学療法士がどれだけ頑張っても歩けない人がいるように,歯科医師がどれだけ調整しても使えない義歯があるのです.癌で治療の甲斐なく亡くなってしまう人がいるように,医療には限界があることをわれわれは認めなければならないのです. 介入すれば必ず機能改善するわけではありません.いつ人生が終わるのかは誰にもわかりませんが,リハビリテーションを望まず,死への準備が始まっている人に対しては無理な介入をせずに見守りながらニーズに応えるという,寄り添う医療,看取りの医療が必要です. 年齢別の医療費の額が,医科は徐々に増加しているにもかかわらず歯科は超高齢者になると減少するのをみても,歯科はこの分野にあまり携わってきませんでした.超高齢化社会において,歯科医療のあり方が見直されるべきときがきているのでしょう.図5-19a,b a:口輪筋が萎縮してしまった症例.b:口から食べられなくても,しゃべる,表情をつくるなどの機能を維持するためのリハビリの装具として義歯は可能なら入れる.ab参考文献1.総務省統計局.人口推計―平成28年9月報―.2016.2.厚生労働省.平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況.2016.3.厚生労働省.厚生労働省老健局総務課.平成27年度.公的介護保険制度の現状と今後の役割.4.寺本信嗣.誤嚥性肺炎:オーバービュー.日胸.2009;68:795‐808.5.Langmore SE, Terpenning MS, Schork A, Chen Y, Murray JT, Lopa-tin D, Loesche WJ. Predictors of Aspiration Pneumonia: How impor-tant is dysphagia? Dysphagia 1998;13(2):69‐81.6.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(編集).骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版.東京:ライフサイエンス出版;2011.7.米田俊之,萩野 浩,杉本利嗣,太田博明,高橋俊二,宗圓 聰,田口 明,豊澤 悟,永田俊彦,浦出雅裕.ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー(改訂追補2012年版).ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会.2012.8.平野浩彦.明日を拓く高齢者医療 5.認知症.日本歯科医師会雑誌.2009;62(2):5.症例7参考図書  菊谷武,坂口英夫(編著).地域歯科医院による有病者の病態別・口腔管理の実態.全身疾患に対応した口腔機能の維持・管理法と歯科治療.東京:ヒョーロン・パブリッシャーズ.2011.  金子芳洋,加藤武雄,米山武義(編).歯界展望別冊.食べる機能を回復する口腔ケア.東京:医歯薬出版.2003.  伊藤利之,鎌倉矩子(編集).ADLとその周辺.評価・指導・介護の実際.第2版.東京:医学書院.2008.127

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