逆根管治療の神髄
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12 歯根端切除術の歴史は古く,歯科医師であれば誰でも知っている治療法であるが,その術式が正しく理解されているとはいえない.いわゆる“根切”として行われてきたこの手術は,根尖を切除することが重視され,肝心な根管治療が疎かにされていた. 筆者は“歯根端切除術”を“逆根管治療(Retrograde Endodontics)”と言い換えることを提案する.なぜならば,この手術は根管から感染源を取り除き,根管を緊密に充填する根管治療に他ならないからである. それでは,なぜ逆根管治療が正しく理解されないのか? それには以下の2つの理由が考えられる.逆根管治療(Retrograde Endodontics)とは1 歯科医師が逆根管治療の最新理論,手技を知らないのは,歯科医師がこの手術を習得する機会が今までなかったからに他ならない.筆者の経験では,歯内治療の教室に入局してから留学するまでの7年間,逆根管治療について何ら教育を受けた記憶がなかった.むしろやってはいけない治療として教育された記憶がある. しかし渡米してみて驚いたことは,大臼歯の逆根管治療でも歯内治療専門医がルーティンに行っていることだった.“日本では外科的に根管治療を行うことは批判的である”と話したところ,“冗談だろう.通法の根管治療だけですべての再根管治療に対応できるわけがない”という返事が返ってきた.日米の根管治療に対する考え方のギャップをつぶさに感じた瞬間であったが,今では自分がその時代に逆根管治療に手を出さなくて本当に良かったと考えている.なぜならばこの手術はマイクロスコープなしに行うべきではなく,若い自分が盲目的に行っていたとしたら,その結果の悪さにおそらく私もこの手術を否定する立場をとっていただろうと思われるからだ.逆根管治療は,近年のマイクロスコープの普及とともに正しく行われるほうがはるかに有効だと考える(図1,2).逆根管治療が正しく理解されない理由その1:歯科医師がこの手術を習得する機会がない1はじめに

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