世界で最も成功率が高いスカンジナビアエンド
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 エンドの世界を一言で説明すると,科学のスカンジナビア,テクニックのアメリカといえるだろう.アメリカのどこかにもよるだろうが,スカンジナビアと比較すると治療を合理的に考えているように思える.もちろんこの合理化の波が若干ヨーロッパにも影響しはじめているように感じるときがある(合理化というのは機械で根管形成するという意味ではない).私がスカンジナビアのエンド,広くはスカンジナビアの歯科医療すべてを好きな理由は,必ずどの分野においても科学的な考え方に基づいているからである.何よりも安心して治療に生かすことができるからである.テクニックは,ある程度は必要であるが,それほど重要ではない場合が多い.難しいテクニックに依存しないで誰でも応用できることの方が重要なポイントである. 私が留学した頃(すでに20年以上前になるが),まったくといっていいほどスカンジナビアの生物学的なエンドの治療方法は日本に輸入されていなかった.ほとんどがアメリカ経由で入ってきた「エックス線写真上でのきれいな根管充填」が重要なのかと思っていた.それどころか根尖から少しシーラーがでるくらいに根管充填できると嬉しくてエックス線写真をみせて回ったくらいである.いまとなっては恥ずかしいばかりである.「エンド治療の本質は何か」を教えてくれるのがスカンジナビアエンドであり,それを学ぶことで世界基準を超えていくのである. たとえば生活歯髄の歯を治療中に露髄してしまった経験はどなたにもあると思う.その際に,歯髄を保存した方がいいのか,抜髄をした方がいいのかを迷うだろう(図2-2).また同じ抜髄治療であっても,用いるテクニックや材料により,若干の差が生じることもあるかもしれない.また一般臨床では抜髄も感染根管治療も同じようなステップで行われることさえあるが,それでいいのだろうか.このような問題に答えるべく,この章ではそれぞれの治療方法における臨床的観点から,どのように治療していくのがスカンジナビア的エンドなのかを説明していく.図2-2 修復治療中に露髄がみられた例. このような場合にどのように対応するだろうか.この現状だけで判断するのが常だろうが,それが失敗を導くのである. どのような理由で患者が来院してきたかを思いだしてみよう.治療する前に露髄の予測ができるはずであるし,予測してから治療をはじめないといけない.露髄してから考えるようでは患者に情報を与えず治療していることになる.必ず,患者の訴える臨床症状と臨床診査およびエックス線から予測できる可能性を患者に伝えないと,後で問題となる.どのような理由でこの歯を治療しようとしたかを思いだしてみよう.なぜスカンジナビアエンドなのか55

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