咬合のサイエンスとアート
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241下顎位,安静時の姿勢,下顎安静位図5-3a〜c 安静姿勢位と「臨床的安静位」(CRP)は,無歯顎者に新しい咬合高径を設定するための開始基準点として伝統的に用いられてきた.安静時顎間距離が顔面基準点から最初に計測される.咬合床を用いて,顔面基準点間距離から2〜3mm減じた距離が閉口時の咬合高径として設定される.図5-4a,b 下顎先端の皮膚基準点は,オトガイ筋の収縮,口唇位置,顔面表情によって著明な影響を受ける.図5-5 安静時の姿勢は,想定されうる安静時の姿勢下顎位が多様に存在するため,定義することが困難である.a a bbc能障害を引き起こすことになると考えられていた4-10.これは部分欠損と全部欠損の両症例において正しいと考えられている.「安静空隙」を乱さず,「安静位」を越えないように,喪失した咬合高径を回復することは重要であると考えられてきた.元来の顔面高径を越えると顎関節症(temporomandibular disorders;TMD)が生じると考えられてきた4-18.安静位,安静空隙‐安静位の計測 安静時姿勢位と「臨床的安静位」は,無歯顎に対する全部床義歯の咬合高径を新しく決定する際の開始基準位として伝統的に用いられてきた.安静顎間距離が顔面基準点から最初に設定される.咬合床を補助的に用いて,顔面基準点の計測値から2〜3mm減じた距離が,閉口時の咬合高径として設定される(図5-3). 下顎オトガイ上の皮膚基準点は,大抵の場合,オトガイ筋上に位置する.オトガイ筋のわずかな収縮,口唇位置と顔面表情の変動によって,オトガイ皮膚上の基準点は著明に変化しうる(図5-4). 安静時の姿勢は,歯科補綴学上,咬合高径回復のための垂直的基準位として用いられ続けている.しかし,補綴治療時の咬合高径設定に必要とされる再現性のある姿勢位の定義や臨床的決定法ならびにその計測については,なお議論が続いている.下顎位は,姿勢,呼吸,嚥下,ストレス,口唇能力,発語の変化に応じてつねに変動し,下顎の姿勢は,この瞬間的に多様な下顎位で生じている(図5-1,5-4,5-5).下顎安静時の歯間距離,すなわち安静空隙は,かつての“freeway space”から現在では“interocclusal rest space;IORS”と呼ばれている(図5-2)19.これは下顎安静位での上下顎切歯間距離である.安静位の用語集定義 長年にわたって米国歯科補綴用語集が版を重ねるたびに,掲載用語の定義は変化してきた19,20. 全部床義歯による無歯顎歯列の回復では,安静時の顎間距離を用いることが慣習的に行われてきた.この顎間距離はもっとも重要な垂直的基準位とされている.安静時咬合高径は,患者を垂直椅座位にして,さまざまな手法によって下顎を安静にさせて設定される11,13-16.

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