咬合のサイエンスとアート
1/6

26第2部1章 進化と比較解剖切歯でかじる動物A若葉や牧草を食す動物BABCDCDマカークチンパンジーアウストラロピテクスヒヒオランウータンホモ・エレクトゥス(原人)図2-1-22 有蹄類の前歯は食物獲得のために合目的に進化する.もっとも多くの有蹄類は,前方に傾斜した下顎切歯と,しばしば欠如する上顎切歯が欠如した場合の上顎歯槽堤をもち,さらには特徴的な長い鼻を有する.草を食す動物は,草を拾い上げるために上顎歯槽堤と下顎切歯を利用する.そして若葉を食すウシは,木や低木の小枝や葉をついばむため,また咀嚼のために切歯を利用する.齧歯類は,かじるため前傾の切歯をもつ.A:ガゼル,シカ,ヒツジ.B:ウマ.C:齧歯類.D:ツチブタ(前歯がまったくなく,アリ・シロアリを常食とするアフリカ産の夜行性動物).図2-1-23 切歯の形態は,霊長類が木をかじるために進化した.さらに視覚的先鋭さと,木に登る技術を向上させるため,さらには果物の皮をむき分割するため,変化してきた.A:マカーク.B:チンパンジー.C:ヒヒ.D:オランウータン.図2-1-24 サル,類人猿,ヒト科における咬合状態.小臼歯と大臼歯の解剖学的構造は,サル,類人猿そしてヒトで類似しているが,犬歯の大きさは進化の過程で小さくなっていった.しかしヒヒだけは後方に反る長い犬歯を有する.一方類人猿は少し犬歯が大きくなり,反対側の歯列に犬歯が収まるための霊長類特有の空隙(霊長空隙)を作った.ヒト科の動物は狩猟採集による食物摂取によって,咬耗した特有の咬合を呈する歯列内に収まる小さな犬歯を有する.

元のページ 

page 1

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です