チームマネジメントのための行動科学入門
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実践編心のキャリブレーション 自信190というのは、アイデンティティが確立したときに得られる感覚です。 自分のできること(テリトリーや所有している知識や能力)がわかります。 自分のできないこと(テリトリーの外にあるものや他人のものである)がわかります。 だから、物事に動じることはありません。 誰かに「……して?」とお願いされても、できることならば「OK」もありますし、できないことならば「それ、専門外だから」と断ることもあります。 なぜなら、自分自身をよく知っているからです。 大事なことは、自分は自分であり、多様性の中で、他人と同じレベルで比較する必要はありません。 他人は他人の人生を生きていますので、あなたに他の人の問題を100%引き受ける責任はないのです。 自己意識が高い人は、自分に満足していますので問題はありません。 でも、残念ながら、日本人の自己意識はなかなか高くならないようです191。 たとえば、こんな人がいます。 「オレって、何でもできるんだぜ!」という、自己顕示の固まりのような慢心した新入社員や、新人ドクターです。 何でもできると思っていますが、まだ、何ができないのかを知りません。 ですから、いつか、ぎゃふんとなるかもしれません。 一方で、こんな人もいます。 「わたし、だめなんです」という、劣等感192の固まりのような新人です。 自分は何にもできないと思っていますが、何ができるのかも把握していません。 さあ、もっと困った人がいます。 過信や慢心していた人が、壁にぶち当たって落ち込みました。 復活すれば自信を持つのですが、そのまま逃げ出してしまうこともあります。 虚栄や見えや威厳という幻影で、自分のまわりに壁(ブロッキング)を塗り固めます。 ますます自分に何ができて、何ができないのかがわからなくなります。 非常に扱いにくい、困った人たちですね。 自分の弱点を見せたくない、自分を大きく見せたいというブロッキングは、あなた自身を成長させないばかりか、コミュニケーションをする相手にも大きな迷惑となってしまいます。2自信と過信と劣等感190 根本橘夫:なぜ自信が持てないのか─自己価値感の心理学.PHP研究所,京都,2007.191 平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成26年6月 内閣府)では、日本人は、自己満足度も、考えをはっきりと伝えることも、冒険心も低く、親からもあまり愛されていないと感じている。http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html192 劣等感は伸びしろであると、アドラー心理学では述べている。 アルフレッド アドラー:人生の意味の心理学〈上・下〉─アドラー・セレクション.アルテ,2010.過信・慢心自信劣等感虚栄・見栄できること◎◎××できないこと×◎◎×107
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