オーラルメディシンに基づいた次世代の歯科診療
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●さまざまな睡眠障害の病態理解は,患者評価に際して重要1.鋭敏な口腔の感覚 気分障害や不安障害といった精神的疾患が,歯科治療を契機に,憎悪するといったことが多くあることです.その理由として,咀嚼・嚥下,発音,呼吸,審美といった日常生活に影響する多岐にわたる機能を口腔がもつこと,あるいは比較的鋭敏な口腔の感覚が背景にあります.侵襲的な処置の多い歯科治療では,この点にあらためて配慮が必要です.2.睡眠障害と歯科治療 現在,睡眠障害と歯科の関連が注目されています.「健康づくりのための睡眠指針2014」は厚生労働省が国民の健康増進のために,睡眠の重要性を提示したものです1.口腔疾患あるいは歯科治療自体も睡眠関連疾患とかかわるため,歯科医師が寄与できる機会も十分にあると考えます.睡眠障害は多くの疾患の総称ですが,睡眠障害国際分類がその理解につながります. 歯科治療の際には気分不快などを訴える背景に,睡眠が十分でないことがあり,また不眠のほか,概日リズム睡眠障害といったさまざまな睡眠障害の病態があることを理解しておくことは,睡眠障害の患者評価にあたって重要です. 不眠症は,睡眠障害の代表的なものです.前述した精神的疾患は,その要因の大きなひとつにもなっています.このような患者に処方されている薬の多くに副作用として,口腔乾燥があります.口腔乾燥は,これ以外の種類の薬でも,ストレスなどの背景も関連します.これらの点を考慮しながら,生活指導や保湿剤の指導を行っていくことが,より重要です.3.睡眠関連ブラキシズム 睡眠関連ブラキシズムは,中途覚醒を引き起こすことから,睡眠医学で睡眠障害のひとつと認識されています.歯科医療においては,補綴物や歯周病の進行にかかわることから,マウスピースによる治療が適応されています.しかし,ストレス背景が考慮されることもありますが,睡眠関連ブラキシズムの原因は解明されていません.4.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS) 睡眠障害のなかで,歯科医師が治療に関与しているものが閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)です.現在,診断は医師によって行われますが,顔面の奥行きの狭さや小下顎症といった顎顔面形態が,本疾患の病態にかかわっている場合があり,よりいっそう歯科医師の役割が重要と認識されています.小児期における上顎側方拡大装置,成長発育過程におけるOSAS発症のリスク評価と矯正歯科治療,OSASに対する口腔内装置治療,上下顎骨移動術をはじめとした手術療法など,睡眠医療と歯科の関連性が深まっています. 顎顔面形態や肥満傾向だけでなく,最近血圧が高く,起床時の頭痛を訴えたり,受付や診察台でもすぐに寝てしまい,いびきもかく,といったOSASが疑われる患者を専門医に紹介するのは,歯科医師の役割です.睡眠障害の病態は多岐にわたるので,睡眠医療を担当する専門医師による適確な診断が重要です.参考文献1. 厚生労働省.健康づくりのための睡眠指針2014.現在の歯科診療とこれからの歯科診療との違い47

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