オーラルメディシンに基づいた次世代の歯科診療
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●体温測定が必要な理由(体温測定からわかること)参考文献1. Aihara H,Arai N.Tympanic temperature of healthy Japanese.Yokohama Medical Bulletin.1994;45(3~4):69-75.1.発熱の原因 病的な体温変化は,低体温と高体温に分けられます.持続的な低体温を呈する疾患としては甲状腺機能低下症,慢性消耗性疾患などが挙げられ,急速な低体温は外傷,大出血,末梢循環不全の場合に認められます. 高体温を示す疾患としては,感染症,悪性腫瘍,膠原病,アレルギー,血液疾患,内分泌疾患などが挙げられます.体温の変動のことを熱型といいますが種々の特徴的な熱型を図1に示します. 本項の症例の患者は全身的な影響が出るまで症状が重症化していたと考えられます.日内変動が1℃以内で平熱まで下がることのない熱型です.このような熱型は弛張熱とされ診断に有用です.2.口腔粘膜疾患との関連 歯科外来で治療に難渋する疾患としては口内炎をはじめとする口腔粘膜疾患でしょう.単純なアフタ性口内炎のみでは発熱はともないませんが,発熱をともなう水疱形成性の口内炎では何らかのウイルス感染による口内炎を疑います.また,薬疹の症状の一部分が口腔内に症状を呈することも少なくありません. 単純に「口内炎に副腎皮質ステロイド軟膏」というような原因を特定しない対処療法処置は適切な対応とはいえません.口内炎発症の原因を調べましょう.そのような際にも体温は重要な診断のための資料となるのです. 来院時の体温だけでなく最近の体温の推移,日内変動なども確認します.口腔内科的な診断を進めるうえで非侵襲的かつ簡便,低コストである検温は必須項目です.稽留熱:発熱が持続 日内変動が1℃以内(℃)腸チフス大葉性肺炎感染性心内膜炎オウム病40393837弛張熱:日内変動が1℃以上 平熱まで下がらない(℃)種々の化膿性疾患ウイルス感染症敗血症,悪性腫瘍40393837間欠熱:体温の変動が1℃以上 最低体温は平熱まで下がる(℃)腫瘍薬物副作用尿路感染症40393837波状熱:有熱期と睡熱期が不規則に繰り返す(℃)Hodgkin病マラリア40393837周期熱:規則正しい間隔で発熱を繰り返す(℃)マラリア回帰熱ステロイド熱40393837図1 特徴的な熱型.現在の歯科診療とこれからの歯科診療との違い23

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