インプラントYEARBOOK2016
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巻頭特別座談会粉砕力ともにインプラントはすぐれていることがわかっています(図27). ライフコース・アプローチにおいて,歯科治療は補綴やインプラントを含めて未病に対する治療という概念が必要だと考えています.脳卒中やがんになった場合は医科の領域になり,歯科は周術期の口腔ケアなどでサポートはできても主役ではありません.しかし,未病における何十年という長い疾病のリスクの蓄積のときには,われわれ歯科が主役になります.その際に重要な考え方としては,外因性の炎症と内因性の炎症を見極めることです.そして,この内因性の炎症に栄養の問題が入ってくるのです.これをインプラントなどの補綴処置で改善する場合には,細菌学的なリスク,菌血症やエンドトキシン血症という問題に注意が必要です. 口腔感染,バイオフィルムは,急性感染症として肺炎を起こし,慢性感染症として動脈硬化を起こし,さらにDNAの修飾(メチル化)を起こします.DNA修飾の蓄積が日本人の死因の1位であるがんから始まり11位の糖尿病まで多くの疾患を引き起こしているのです(図28).具体的には動脈硬化は死因の2位の心疾患と4位の脳血管疾患,および8位の腎不全と9位の大動脈瘤を引き起こします.死因第3位の肺炎(急性感染症)を引き起こすのも口腔のバイオフィルムです.もちろんバイオフィルムの状況だけではなく,本日のテーマである食事,栄養,内臓脂肪が発症に関連しますし,ストレスと運動不足も関連してきます.これを歯科医院で全体的にコントロールし,持続する慢性炎症を消去していくことが健康づくりにつながっていきます.図27a,b 低栄養改善のために歯科医療にできること.最新の補綴治療で噛む力が回復する14).図28 口腔感染(バイオフィルム)と日本人の死亡原因の関係.6070805040302019.9±5.310食品粉砕力0RDP普通の有床義歯Removable Dental ProsthesisFood Comminution Index (%) インプラント支持有床義歯インプラントIRDPIFDP38±7.761.6±10.6***600500400300200178.1±36.4100最大咬合力0RDP普通の有床義歯Removable Dental ProsthesisMaximum bite force (N)インプラント支持有床義歯インプラントIRDPIFDP318.4±47.1483.9±50.5***口腔感染(バイオフィルム)急性感染症(誤嚥性肺炎)3位 肺炎死亡原因1位、2位、4位運動不足ストレス内臓脂肪食事死亡原因3位DNAメチル化慢性炎症動脈硬化慢性感染症9位 大動脈瘤8位 腎不全4位 脳血管疾患2位 心疾患11位 糖尿病1位 がん1234567891011悪性新生物心疾患肺炎脳血管疾患老衰不慮の事故自殺腎不全大動脈瘤および解離肝疾患糖尿病ba22巻頭特別座談会

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