インプラントYEARBOOK2016
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巻頭特別座談会生活習慣病を引き起こすメカニズム花田 図23は昨年,厚生労働科学研究で厚生労働省に提出された報告書の内容で,ここでもオーラル・フレイル期という言葉が出てきました.フレイル期を予防するためには,サルコペニア(筋量と筋力の低下),ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の時期をコントロールする必要があり,さかのぼってはサルコペニアになる前のオーラル・フレイルのコントロールに関して,歯科の協力が必要であると目されるようになりました. オーラル・フレイルは,はじめにう蝕と歯周病が起こり,それが歯の喪失をまねき発症します.オーラル・フレイルの根本的な原因は,口腔リテラシーが低いことだと考えられているのです. 図24はサルコペニアの前にタンパク質低栄養があり,その前に口腔の虚弱(オーラル・フレイル)があることを示しています.健康教育の不足に起因する栄養学的なフレイルの流れと,もうひとつは,う蝕と歯周病が直接菌血症やエンドトキシン血症になって生活習慣病を引き起こし,入院して障害を抱えて生きていくフローです.私はこの両方のコントロールが必要だと考えています.インプラントの細菌学的注意点 インプラントはオーラル・フレイルを回復させるという意味では非常に強力なツールです.しかしながら,インプラント周囲炎によって菌血症やエンドトキシン血症を引き起こしかねないというマイナス面も忘れてはいけません.インプラント治療を行っている先生方は栄養指導でプラス面を高めていく一方,細菌のコントロールをしてエンドトキシン血症「患者の健康増進とリスク低減の両方をつねに念頭に置きながらインプラント治療を行う必要がある」口腔機能心身機能代謝量低下低栄養サルコ・ロコモ食べる量低下舌運動の力低下咬合力低下サルコ・ロコモ期食品多様性低下食欲低下噛めない食品増加食べこぼし・わずかのむせ滑舌低下オーラル・フレイル期生活の広がり活動量低下精神(意欲低下)心理(うつ)活動量低下精神(意欲低下)心理(うつ)お口の健康の無関心口腔リテラシー低下むし歯と歯周病口腔リテラシー低下むし歯と歯周病歯の喪失前フレイル期フレイル期咀嚼機能不全摂食嚥下障害運動・栄養障害要介護フレイル虚弱高齢者口腔の虚弱QOL(口腔・全身)・生活機能疾患(多病)・多剤要介護を防ぐ:歯科の戦略疾病未病健康エンド・歯周治療による菌血症の管理:NCDs予防健康寿命の延伸・健康格差の縮小病原因子入院障害生活習慣病(NCDs)菌血症エンドトキシン血症う蝕/歯周病喫煙・飲酒要介護虚弱(フレイル)サルコペニア肥満タンパク質低栄養口腔の虚弱健康教育の不足補綴と指導による栄養管理:フレイル予防図23 厚生労働科学研究報告書:オーラル・フレイル期における歯科口腔機能の軽微な変化がフレイルにつながることを実証する研究が現在実施されている.図24 歯科医療と健康寿命の延伸の関係:補綴・栄養管理と菌血症の予防を実施することにより,健康日本21の目標である「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を実現する.患者のライフ・コースとリスクファクターを把握したうえでインプラント治療を行っているか?320巻頭特別座談会

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