インプラントYEARBOOK2016
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巻頭特別座談会月の検査でどのように体組成が変わっていくかを評価していきます(26ページ・付録2). 図14の症例は62歳の男性で,右側の下顎大臼歯を欠損していました.グルコセンサーで測定すると右下の咀嚼機能は70mg/dl.下はインプラントが埋入されたあとで,上部構造まで入ると230mg/dlまで咀嚼機能値が上がってきます. また,インプラントではなく総義歯を装着した症例ですが,82歳の男性で,初診時の体重は30.8kg,タンパク質低栄養の状態で基礎代謝も筋肉量も低く,BMIも12.8で完全な栄養失調状態でした.ところが総義歯を装着後に保健指導を行うと,体重は49.25kg,BMIも20.5に回復し,それまで歩けなかったのが,半年も経たないうちに自力で歩き始めました.ですから,この栄養摂取における咀嚼機能向上の効果はあるのだと実感しています. ここでデータを供覧したいと思います.当院の患者さん35名についてグルコセンサーで咀嚼能を実際に測ってみますと,補綴前咀嚼機能値は平均で61mg/dl.インプラントに限らずさまざまな方法で補綴を施すと,平均136mg/dlと2倍以上咀嚼機能が上がることがわかりました(図15).また,7名と少数ですが,補綴を施したうえで保健指導を行うと体脂肪率が確実に下がることもわかりました(図16).なおかつ,基礎代謝は上がり,タンパク質,糖質,脂質の比率もだんだん良くなってきました. さらには,図17に示す栄養充足率です.100%に届くまでタンパク質が充足されています.それから脂質も充足し,糖質が減ってきます.そして,ミネラルやビタミンは軒並み充足してきます.食物繊維はやや上がり,食塩は減少.咀嚼機能の整備,摂食の環境の整備によって栄養状態も改善されます.患者さんに頼んで血液検査をさせてもらうと,補綴して保健指導する前よりも必須アミノ酸の濃度図14:下顎臼歯部インプラント治療後に保健指導を行い,体質改善を行ったケース項目保健指導前(かた太り型)保健指導後(標準)咀嚼機能値70(右欠損側)230(右補綴側)体重(kg)88.0078.55BMI28.225.2体脂肪率(%)26.9021.80筋肉量(kg)61.0558.25除脂肪体重(kg)64.3561.45脚力8892基礎代謝(kcal)(年齢別基準値×体重kg)1,802実測(21.5×88=1,892)1,696実測(21.5×78.5=1688)内臓脂肪レベル1714血圧(収縮期/拡張期mmHg)150/95135/85【生活習慣上の問題点】・外食・アルコール摂取が多い・クロワッサンなどのパンや揚げ物が好き・運動習慣なしインプラント補綴・保健指導後インプラント補綴・保健指導前図14 患者は62歳の男性.₇₆欠損であった.中等度歯周炎に罹患していたほか,高血圧・高脂血症であり,上記のような生活習慣の問題点があった,インプラント補綴後,食事指導をはじめとした保健指導を行った結果,図中右表のように体組成が改善された.16巻頭特別座談会

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