インプラントYEARBOOK2016
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インプラント治療で生活習慣病を予防する―咀嚼機能回復後の食習慣改善と栄養指導が導く健康寿命の延伸―咀嚼機能の低下がまねく全身の変化武内 萩原先生からもお話があったように,咀嚼機能の改善が健康づくりとどのように結びついているかは,とても重要です.「Non-Communicable Dis-eases(NCDs:非感染性疾患)を予防・改善する歯科」という視点で,咀嚼機能がどのような働きをしているのかという原点に立ち,インプラント治療の役割をとらえ直してみたいと思います. インプラントや義歯を含めた補綴による咀嚼機能回復が健康に至る一手段だと考え,最終的な目標を体組成や代謝の改善につなげられたら健康づくりに役に立つだろうという考え方です(図7).咀嚼機能が低下した方は,得てしてGI値が高い食品であるうどんやチャーハンといった軟性食材である糖質の摂取量が増えてしまいがちです.これらの食品は非常に早く飲み込めますので,食後高血糖をまねきます.そして,高カロリーで低タンパク質の低栄養状態,さらに高インスリン血症にもなりやすくなります.またその間に,糖質・脂質代謝異常が起きてきます.結果,骨量・筋肉量の低下によって体組成に影響が出てくるという流れです(図8). そこで,グルコセンサー(ジーシー社)という咀嚼機能測定デバイスを用いて測定・評価を始めました(図9).やはり咀嚼機能の基準値があれば咀嚼機能低下症を早く見つけられ,本人の主訴ではなく客観的な数値で受診勧告ができます.それによって健康づくりがもっと機能的に行えると考えています.咀嚼機能を血圧のようにわかりやすい基準値として国「インプラントを含めた補綴による咀嚼機能回復を健康に至る一手段と考え,最終目標を体組成や代謝の改善につなげられれば健康づくりに役に立つ」咀嚼機能回復と抗加齢・健康づくり効果・噛めるようにすること(補綴・インプラント)は目的ではなく,健康に至る一里塚 (手段)・歯科補綴の目的は,(栄養状態改善, 代謝性疾患予防・改善, 体組成改善など)メタボリック症候群改善,そして健康づくり咀嚼機能回復・向上 → 体組成・代謝の改善へ (第一評価項目)    (第二評価項目)図7 「NCDsを予防・改善する歯科」という視点でとらえ直したインプラントの役割.図9 咀嚼機能評価機器グルコセンサーによる測定の手順.図8 咀嚼機能が低下した患者の体組成が変化していく過程.噛めない人の咀嚼機能低下6,10,11)糖質偏重食7)軟性食材高GI食品丸呑み早食い高カロリー低栄養食タンパク質低栄養8,10)高インスリン血症高脂質血症8,10)糖質・脂質代謝異常骨量・筋肉量低下8,10,11)グルコース含有グミ準備20秒間咀嚼水10ml 計量水10ml で軽くうがいグミと糖溶液をカップに吐き出すグルコセンサーで糖濃度mg/dlを測定インプラント治療後の保健指導を行っているか?213

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